家賃滞納の発生から立ち退きの強制執行までの流れを解説



家賃滞納から強制執行にて明け渡しさせるまでの流れ


賃貸経営に家賃滞納はつきものですが、こじれてしまうと最終的に強制執行による物件の明け渡しが必要になってきます。


強制執行や家賃の回収をするために必要な手続きなど、一連の流れを以下にまとめました。


明確な期間は定まっていませんが、完了までに最低でも3ヶ月程度の日数がかかると考えられています。


執行文付与の申立


強制執行を申し立てるためには債務名義が必要となり、訴訟、支払督促、民事調停などの法的手段によって取得することができます。


債務名義とは債務者に対して債権を公的に証明したもので。執行力をもたせるためには執行文付与の申立を行わなければいけません。


送達証明書の取得


申立書類として、送達を証明する「送達証明書」が必要となります。

判決から1~2週間程度で送達証明書が送られますので、2週間以降に送達証明書を申請しましょう。


強制執行の申立


家賃滞納者からの控訴がなければ、そのまま判決が確定します。

判決が確定したら強制執行の申立を行うことができます。


執行官との打ち合わせ


電話、もしくは対面にて執行官と打ち合わせを行います。明け渡しの催告日、作業の業者などについて話し合います。


明け渡しの催告


催告の段階で、滞納者へ強制的に明け渡しをする旨を伝え、室内の状況を強制的に確認することができます。


滞納者の部屋の鍵を開ける必要がありますが、開かない場合は別途合鍵製作が必要となり、鍵代金はオーナー(賃貸人)が負担します。


強制執行


強制執行は設定した引き渡し期限の数日前に行われます。

強制執行の費用は賃貸人が負担しますが、負担分は申立時に執行官へ収めた予納金から差し引いた金額となります。


明け渡しの時に滞納者の家財道具の中から資産価値のあるものがあれば、その場で差し押さえすることができます。


注意したい、強制執行時の立ち退きの無視や居座りについて


催告の日に強制執行の断行日をその場で伝え、催告の内容を室内に貼り付けて2~4週間後の断行日に再訪します。


滞納者がすんなり明け渡しに応じてくれると良いのですが、居座りや健康上の理由で退去できないケースがあるため注意しなければなりません。もちろん法的に認められている執行なので滞納者が居座っても追い出すことはできます。しかし、重篤な病状など生死に直結してしまう状態の場合はその場で明け渡すことはできないことを把握しておきましょう。


この場合、役所と連携して福祉事業所に転居先を探してもらうなどの手続きを行うこととなります。


強制執行後の家賃滞納者の荷物等その後について


強制執行の断行日には、ほとんどの場合、滞納者の荷物が残ったままの状態となっています。


滞納者の荷物は大切に扱い、執行官が指定した倉庫へ保管しなければいけません。

一定期間保管された荷物は滞納者や親族に引き渡されますが、できない場合は執行官によって売却され執行費用に充てられます。


部屋を完全に空にし、荷物の引き渡し、処分まで完了するとようやく強制執行完了となります。




家賃滞納者への強制執行までにかかる費用


強制執行は執行まで長い期間がかかりますが、費用面はどのようになっているのでしょうか。


強制執行の費用は貸主の負担です。

弁護士に依頼することを前提に、以下の表にかかる費用をまとめてみました。

不動産謄本や固定資産税評価証明書数千円合計約40万円合計約37万円


以上の金額は概算となっており、ワンルームなどの小さな部屋をもとに計算しています。

一般的に部屋の面積が大きくなれば、費用がさらにかさみます。


家賃滞納案件は貸主側は被害者ですが、強制執行にはこれだけの費用がかかってしまうのです。理不尽に感じるとは思いますが、実情を冷静に認識しておきましょう。


強制執行までに、おおよそ80万円程度かかる


]家賃の督促に比べて強制退去を求める訴訟になると、費用が一気に大きくなってしまいます。


後に返還される保証金を含めると必要金額は約130万円です。

家賃が回収できたときに弁護士へ支払う費用を合わせると、最大にかかる費用はもう少し増えることになります。


できれば、家賃督促の段階で解決したいところです。


強制執行は弁護士に依頼するべき?


訴訟すれば費用は高額になりがちですが、それでも弁護士へ依頼するメリットを考えてみましょう。


考えられるメリットは以下の通りです。

  1. 手間が省ける

  2. 専門家に頼むことでスムーズな解決を見込める

  3. 弁護士からの連絡で家賃の支払いに応じる可能性がある

訴訟に関する手続きは専門的で、書類の用意を含めてとても手間がかかります。そのため、専門性を有する弁護士に依頼すれば、訴訟にかかる煩わしさの大半を外部に委託ができます。


第三者の介入によって事態が好転することもありますので、弁護士への依頼はデメリットよりもメリットのほうが大きいと考えれれます。


家賃滞納者へ強制執行の費用を請求することはできる?


強制執行の手続き費用を家賃滞納者へ請求することは法的に認められています。

申請時の請求債権目録に応じて、強制執行に妥当な金額を請求することができますので、全額回収できずとも、念の為請求しておきましょう。


ただ、回収できる金額は、あくまで相手の資産状況によるところが大きいので、楽観は禁物です。





強制退去後、家賃滞納者の荷物の取り扱いについて


強制執行時、家賃滞納者の荷物の取り扱いはどのようなっているのでしょうか。基本的な取り決めと、残置物の対処の方法を解説していきます。


勝手に処分ができない


家賃滞納者の荷物は個人の財産なので、明け渡し命令が出ても勝手に処分することができず、例え滞納者の連帯保証人であっても荷物を勝手に処分することはできません。


勝手に処分してしまい、賃借人から訴えられるとほぼ確実に敗訴してしまいます。明け渡し命令の対象となるのは不動産で、荷物などの動産は対象外となり、対象外の荷物を「目的外動産」と呼びます。


荷物は一定期間の保管が必要


強制執行の断行日に荷物がすでにまとめられていたり、本人により対応済みであれば問題がないのですが、本人不在でそのままにされた荷物はどうしたら良いのでしょうか。


家賃滞納者の荷物は執行官によって、一定期間保管され家賃滞納者の引き取りを待ちます。

この場合の一定期間とは特に決まりはなく、裁判所指定の保管場所にて約1ヶ月程度保管されます。


もし引き取りがなかった場合、競売によって売却されますが、競売が成立するまでの間、荷物は保存され続けます。


競売で売れなかった荷物は、多くの場合、執行官の負担を減らすために貸主が買い取って、執行官による保管を終了させてその後廃棄するという方法が取られているのが現状です。


残された荷物の対処法


家賃滞納者の荷物の処分について、2つの方法をまとめました。




法的手段は執行官による処分の方法で、先述のとおり1ヶ月程度の保管期間を経て、執行官により競売に掛けられることがほとんどです。


競売でも売却ができない場合、賃借人が買い取って破棄するケースが多く見られます。


交渉による方法は、強制執行前、もしくは入居時に書面を取り交わし、残置物の処分について明確にしておきます。


賃貸物件の重要事項説明書の内容に残置物についての記載がありますが、これがあると処分後に訴えられても敗訴することはありません。


万が一のことを考えて、残置物の処理について事前に書面を取り交わしておいたほうが良いでしょう。






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