公開日:2025.07.02 賃貸管理 賃貸経営

オーナーが負担する原状回復の費用相場は?退去時によくあるトラブルと対処法

原状回復と書かれたブロックと人形と家

賃貸物件から入居者が退去する際、原状回復の費用についてオーナーがどこまで負担すべきか悩むケースは少なくありません。

経年劣化や通常損耗のガイドラインが曖昧なため、入居者との間でトラブルが生じることもあります。

原状回復のルールや費用相場、よくあるトラブルとその対処法を把握しておくことで、不要な負担や紛争を避けることが可能です。

安心して賃貸経営を続けるために、重要なポイントを理解しておきましょう。

オーナー側が対応する原状回復の範囲

原状回復トラブルの原因は?オーナーが負担する範囲や対処法についても解説

賃貸物件を持つオーナーとしては、入居者にはできるだけきれいに住んで欲しいと思っていても、長く生活していると部屋の汚れや設備の破損は避けられません。

その際に問題となるのが、原状回復費用は入居者とオーナーどちらが負担するのか?ということです。

まずは、原状回復の概要、原状回復でオーナーが費用を負担するケースについて解説していきます。

原状回復とは?

賃貸物件における原状回復とは、退去時に「部屋を入居前の状態に完全に戻す」ことではありません。

国土交通省のガイドラインでは、通常の使用による損耗や経年劣化は原則としてオーナー負担としています。入居者の故意や過失によって生じた損傷や汚れについてのみ、原状回復を行う費用を請求できます。

つまり、経年劣化による損耗や通常の使い方をして故障したのであれば、オーナーが原状回復を行う必要があるということです。

原状回復でオーナーが対応するケース

原状回復でオーナーが負担するケースは、主に通常の使用によって生じた損耗や経年劣化、自然災害による損傷です。

たとえば、クロスの日焼けや家具などによるへこみ、フローリングのひび割れ、畳の日焼け、障子や網戸の劣化などはオーナーが負担する必要があります。

つまり、日常生活を送る中で発生したものは入居者に原状回復の義務はないため、原則オーナーの負担になるということです。

原状回復の費用負担まとめ

原状回復にかかる費用をどちらが負担するのか、原因・状況別にまとめました。

原因・状況 費用負担者
壁紙、畳、フローリングの変色や色褪せ オーナー
家具の設置による床やカーペットのへこみ オーナー
冷蔵庫・テレビの背面の電気やけ(黒ずみ) オーナー
画鋲・ピンなどの小さな穴 オーナー
※大きな穴や過度に穴が開いている場合は入居者負担になる場合がある
結露によるカビ オーナー
※使い方に問題がある場合は入居者負担になるケースもある
地震などの自然災害によるガラス破損 オーナー
壁に大きな穴、落書き、タバコのヤニ 入居者
ペットによる傷、臭い(ペットが禁止されている場合) 入居者
水漏れや給湯器故障を放置したことによる床の腐食 入居者
不注意で破損した建具、設備(ドアやガラス) 入居者
引っ越しの時に発生した傷 入居者
台所、水回りの油汚れ・カビ 入居者
鍵の紛失、破損による交換 入居者

上記はあくまで目安であり、入居者の部屋の使い方によっては負担者が変わることがあります。

オーナーが負担する原状回復の費用相場はいくら?

不動産の模型とお金と電卓

先ほど原状回復でオーナーが対応するケースについて解説しました。次に問題となるのが、原状回復の費用がどのくらいかかるのかということです。

オーナーが負担する場合の原状回復の費用として、水回り設備の交換や、壁・天井のクロスの張り替え、床材の張り替えや補修、エアコンや給湯器の交換などそれぞれ解説します。

水回り設備の交換費用

水回り設備であるキッチン、トイレ、浴室、洗面に関する設備の交換費用をまとめました。

設備全体を交換するのか、一部を交換するのかで費用が異なるため、交換箇所ごとに相場の費用を記載しています。

部屋 交換箇所 工事費用(相場)
キッチン システムキッチン 約60〜150万円
ミニキッチン 約30〜70万円
ガスコンロ 約3〜10万円
IHコンロ(電源工事を含む) 約5〜20万円
トイレ トイレ本体 約10〜25万円
ウォシュレット 約3〜8万円
浴室 ユニットバス 約60〜150万円
浴槽の補修・塗装 約5〜20万円
洗面所 洗面台本体 約10〜20万円
洗面ボウル 約3〜10万円

これらはあくまで一般的な工事費込みの相場です。設備のグレードや既存設備の状況などによって金額は変動します。

壁や天井の壁紙の張替え費用

壁や天井のクロス張り替えは比較的安価ですが、防カビなど効果がある部材を選ぶと費用が倍以上になることがあります。

以下は、壁や天井の壁紙を張替えた場合の費用の目安です。

作業内容 単価・費用 備考
クロス張替え(通常) 約800〜1,500円/㎡
クロス張替え(防カビなど) 約2,000〜3,000円/㎡ 防カビ・消臭機能など
既存のクロスを剥がす 約200〜500円/㎡
下地処理 約200〜600円/㎡ 下地の傷み具合による追加費用
壁の小さな穴の補修 約8,000〜15,000円/箇所 物をぶつけた場合など
30cm以上の穴の補修 約15,000〜30,000円/箇所 石膏ボードの交換が必要な場合は25,000〜70,000円

物をぶつけてしまったなどでできた壁の穴の補修は、8,000〜15,000円程度ですが、30cm以上の穴になると石膏ボードの交換が必要になることがあります。

下地ごと交換することになるため、25,000〜70,000円前後の費用が発生します。ただし、大きな穴を補修する費用は、入居者負担になることがほとんどでしょう。

床材の張替え・補修費用

床材の張替えや補修は、クッションフロアや、フローリング、畳など材質によって費用が異なります。

床材ごとに張替えの費用について表にまとめました。

床材の種類 張替え費用(1㎡あたり)
クッションフロア 約3,000〜5,000円
フローリング 約7,000〜12,000円
畳(表替え) 約4,000〜8,000円/1枚あたり
畳(新調) 約10,000〜18,000円/1枚あたり
カーペット 約4,000〜8,000円

フローリングの傷やへこみの補修は、傷の度合いによって異なります。

小さな傷(表面の擦り傷や軽微な色はげ)であれば、1箇所で5,000〜10,000円程度です。一方、中程度の傷(削れ、塗装の剥がれ、小さな剥離)では、1箇所で10,000〜20,000円程度になることがあります。

エアコン・給湯器の交換費用

エアコンと給湯器は暮らすうえで必須の設備となっています。

エアコンクリーニングは、目安として1年に1回程度がおすすめですが、入居中のお部屋は入居者が使用しているため、退去のタイミングなどで行うと良いでしょう。

エアコンと給湯器の交換費用は、種類や機能によって異なります。

種類 交換費用(工事費含む)
エアコンの交換費用(6〜8畳用) 約60,000〜100,000円
既存のエアコンの撤去処分費用 約3,000〜5,000円
エアコンのクリーニング費用 約8,000〜12,000円
ガス給湯器(給湯専用) 約80,000〜120,000円
ガス給湯器(追い焚き機能付き) 約120,000〜180,000円
電気温水器 約180,000〜300,000円
エコキュート 約300,000〜500,000円

エアコンはクリーニングすることで長持ちするため、交換しない場合はクリーニングすることをおすすめします。

給湯器の交換は、業者によって複数台を同時交換することで割引してくれるところもあるため、相見積もりをとると良いでしょう。

間取り別のハウスクリーニング費用

ハウスクリーニング費用は、賃貸契約書に特約として明記されている場合は、入居者負担となることがあります。

ただし、国土交通省のガイドラインが定める「通常の使用」に当てはまる場合は、入居者への負担を無効と判断されることもあるため、入居者への事前説明と合意が重要です。

間取り別にハウスクリーニングの費用について以下にまとめました。

間取り おおよその面積 費用相場
1R・1K 25㎡ 15,000〜25,000円
1DK 25〜30㎡ 20,000〜30,000円
1LDK 30〜40㎡ 25,000〜40,000円
2LDK 50〜65㎡ 35,000〜55,000円
3LDK 70〜85㎡ 45,000〜70,000円
4LDK 85㎡以上 55,000〜90,000円

ハウスクリーニングで注意しておくポイントとして、油汚れやカビ、ペット臭など汚れの度合いがひどい場合は追加料金がかかる恐れがあります。

また、エアコンやレンジフードの清掃、浴室の防カビコーティングなどはオプションになるため、サービス内容を確認しておくとよいでしょう。

関連記事:ペットの飼育による原状回復はオーナーが負担すべき?過去の判例も解説

そのほか軽微な設備の交換費用

そのほか、照明器具や水道のパッキン、網戸など、比較的軽微な設備の交換費用は以下の通りです。

設備 費用相場
シーリングライト交換 5,000〜12,000円
水回りパッキン交換 2,000〜6,000円
網戸張替え(中窓 180cm×90cm) 3,000〜6,000円/1枚あたり
網戸張替え(掃き出し窓 180cm×180cm) 4,000 〜8,000円/1枚あたり
ドアノブ交換(室内) 4,000〜8,000円
浴室換気扇交換 10,000〜25,000円

上記で挙げた以外の、電球の交換やコンセントカバーの交換はオーナー自身でも簡単にできる作業です。

簡易的な作業は業者に依頼せずに自分でやることで経費削減に繋がります。ただし、コンセントの増設やガス管の接続といった一見簡単な工事でも、専門的な知識と資格が必要なため注意が必要です。

賃貸物件の原状回復でよくあるトラブル事例と対処法

自主管理でよくあるトラブル。大家さんが直面する問題とその対策とは

全国の消費生活センターには、賃貸住宅に関する相談が寄せられており、なかでも退去時の原状回復に関する相談は毎年13,000件程度といわれています。

ここでは、原状回復でよくあるトラブルの事例とその対処法について解説していきます。

入居時から傷ついていたと主張された

原状回復に関するトラブルで、「入居時から傷がついていた」と主張するケースは非常に多く見られます。

上記のように主張されたときの基本的な対処法は以下の通りです。

①入居時の状態を確認する

  • 入居前の室内写真や動画を確認する(不動産会社が撮影していることがある)
  • 入居者に傷や汚れについて記録しているか確認する

②入居者と事実確認する

  • いつ、どこに、どんな傷があったかなど詳細を確認する
  • 入居立会いの際、申告がなかったのはなぜか?など説明に矛盾がないか整理する

③ガイドラインに沿って対応する

  • 通常損耗や入居時にあった瑕疵(傷)については入居者に負担できない

国土交通省のガイドラインに沿った処理をすることで、仮に裁判などに発展してもオーナー側は不利になりにくいのです。

トラブルを防ぐポイントとして以下のことを行うとよいでしょう。

  • 入居前の室内写真を撮影する(日付入りが望ましい)
  • 入居時チェックリストを作成し、入居者に記入、内容に問題がなければサインしてもらう
  • 賃貸借契約書に原状回復のルールを明確に記載する

費用が高額で支払えないと拒否された

「原状回復の費用が高額で支払えない」と入居者から拒否された場合、以下のような対処法が有効です。

①請求金額の内訳を明確に提示する

  • 大まかな見積もりや一括請求ではなく、請求の内訳を明確に提示する
  • 通常損耗や経年劣化に該当するものを請求に含めていないか確認する

②分割払いや減額交渉を検討する

  • 経済的な理由で入居者が一括で払えないのであれば、分割払いを提案する

上記の対処法でも拒否された場合は、内容証明郵便で正式に請求したり、保証会社の代位弁済を利用したりすることで、少額訴訟や民事調停へ進められます。

再発防止のポイントとしては以下の方法が挙げられます。

  • 入居時に原状回復ガイドラインに基づく特約の説明をする、入居者に署名してもらう
  • 原状回復にかかる費用の相場表を事前に共有しておく
  • 借家人賠償責任保険でカバーできる損害があるか確認しておく

なお、ワンルームや1Kの場合、原状回復の費用総額は2〜9万円程度ですが、部屋の広さや損耗の程度によって大きく異なります。

参考:国民生活センター|「―賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意―

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