老朽化した賃貸物件が倒壊したら責任はオーナー?具体的な対策方法を解説

もしも、建物が崩れて入居者や近隣に被害が及んだ場合、その責任は誰が負うのでしょうか。老朽化した賃貸物件は、外壁のひび割れや屋根の劣化などから倒壊リスクを抱えています。
「すべてオーナーの責任になるのでは」と不安を感じる方もいるかもしれませんが、実際は倒壊した原因や状況によって判断が異なります。適切な管理を怠れば賠償責任を問われる可能性があるため、責任範囲を正しく理解しておくことが大切です。
賃貸物件におけるオーナーの責任範囲
賃貸物件のオーナーには、単に部屋を貸すだけではなく、借主が安心して暮らせる環境を整え、維持するという大切な責任があります。建物は年月とともに劣化し、外壁のひび割れや雨漏り、設備の故障などが起こるからです。
これらを放置すれば、借主の生活に支障が出るだけでなく、大きな事故につながる可能性もあります。そのため、オーナーには建物や設備の安全性を保つ義務が課されています。
以下は、賃貸物件のオーナーが負う責任を具体的にまとめたものです。
①建物の安全性確保
- 耐震性や老朽化への配慮、法令に適した建物を維持する責任。
- 倒壊や損壊による人身事故、物損を防ぐ義務。
②設備や共用部分の維持管理
- 水道、電気、ガスなどの基本的なライフラインの正常稼働を維持する。
- 共用部分(廊下、階段、屋根、外壁)の修繕、管理責任。
③修繕義務
通常の使用で発生した損耗や故障についてはオーナーが修繕※借主の故意・過失による破損は借主負担
④安全配慮義務
- 建物や設備が原因で借主や第三者に危害を及ぼさないように配慮する。
- 事故防止のために必要な点検、対応を行う。
⑤法令遵守
建築基準法、消防法、借地借家法などに基づく責任。
このように、オーナーは建物の安全と居住環境の維持に関して大きな責任があるのです。ただし、倒壊した場合でもオーナーがすべての責任を負うわけではありません。
次の章では、賃貸物件が倒壊してしまった場合に、オーナーがどのような責任を負うのかをケースごとに分けて詳しく解説していきます。
賃貸物件が倒壊した場合の責任問題【ケース別に解説】
アパートやマンションなどの賃貸物件が倒壊してしまったら、その責任はオーナーがすべて負うのでしょうか。賃貸物件におけるオーナーの責任は、通常の維持管理や修繕義務だけでなく、建物の倒壊にも及ぶこともあります。
建物が倒壊すれば、借主や近隣住民の生命や財産に甚大な被害を及ぼし、オーナーが法的責任を問われるケースも少なくありません。民法には、「建物などが壊れて人に危害を加えた場合、所有者がその責任を取らなければならない」というルールがあります。
ただし、オーナーの責任範囲は倒壊した原因によって変化します。ここでは、老朽化や自然災害、修繕不足など、賃貸物件の倒壊が想定されるパターンごとにオーナーの責任について解説していきます。
賃貸物件が老朽化により倒壊した場合
老朽化が進んだ建物は、通常の居住に耐えられなくなる危険性が高まります。オーナーには安全配慮義務といって、建物を安全に使用できる状態に維持管理する義務があり、これを怠ると民法415条の「債務不履行責任」に問われます。
たとえば、外壁や柱のひび割れ、屋根の劣化などを長年放置し、倒壊につながった場合は、オーナーが損害賠償責任を負う可能性は高いでしょう。借主が通常どおり使用していたにもかかわらず倒壊した場合、責任はオーナーにあると判断されるかもしれません。
【民法415条】債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
e-Gov 法令検索:民法
自然災害により賃貸物件が倒壊した場合
地震や台風、豪雨などの自然災害による倒壊は、一般的には不可抗力とみなされ、オーナーが直接責任を負うことはほとんどありません。
しかし、建物が旧耐震基準のままで補強を怠っていたり、災害を見据えた必要な修繕をしていなかったりすると、倒壊した原因としてオーナーは責任を問われる可能性があります。
自然災害だからといって常に免責されるわけではなく、災害の被害を最小限にするため努力をしていたかどうかが判断基準となります。
関連記事:賃貸物件が地震で倒壊!?大家はどうするべき?初動対応と事前対策を解説
修繕・メンテナンスの不備により倒壊した場合
民法606条では、賃貸物件のオーナーに修繕義務が課されています。つまり、建物の利用に支障が出る場合や安全性に問題がある場合、オーナーが必要な修繕を行わなければならないということです。
たとえば、雨漏れなどを放置して木材が腐食し、結果として建物が倒壊した場合は明らかにオーナーの修繕義務違反とされます。借主に重大な被害が出れば、損害賠償や慰謝料の請求に発展する可能性も高く、物件の管理不備は非常に重い責任が伴うといえます。
【民法606条】賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
e-Gov 法令検索:民法
設備の不具合を認識していない状態で倒壊した場合
オーナーが倒壊の原因となる不具合を知らなかった場合でも、免責されるとは限りません。
民法717条に定める「土地の工作物責任」により、建物や設備の欠陥で他人に損害が生じた場合、不動産の所有者は原則として責任を負います。つまり、オーナーに故意または過失がなくても損害賠償責任を負うべきという考え方ですので、知らなかった場合でも責任を免れられない可能性があるのです。
【民法717条】土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
e-Gov 法令検索:民法
倒壊の責任を負わないことを特約に記載していた場合
賃貸借契約書に「倒壊の責任は負わない」といった特約を盛り込んだとしても、必ずしも有効になるわけではありません。
特に、個人が住居を目的として契約する場合、消費者契約法によって借主は消費者にあたり、借主に不利益な特約は無効と判断される可能性が高いからです。つまり、オーナーが自らの責任を一方的に免れることは難しく、法律上認められないケースがほとんどです。
そのため、賃貸借契約書に免責を記載するだけではなく、建物の維持管理を適切に行い、リスクを未然に防ぐことが何よりも重要になります。
【消費者契約法8条】次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
e-Gov 法令検索:消費者契約法
老朽化した賃貸物件のリスクを早期発見する方法
賃貸物件は年月が経過するにつれて、外壁のひび割れや屋根の劣化、配管の腐食など少しずつ老朽化が進行していきます。
これらを放置してしまうと、雨漏りや設備の故障といった生活関係のトラブルだけではなく、最悪の場合は倒壊など大きな事故につながる恐れがあります。
オーナーが早い段階で異常に気付き、必要な修繕や点検を行うことは借主の安心にも直結します。ここでは、老朽化によるリスクを早期発見するための具体的な方法を3つ解説します。
劣化している場所を目視でチェックする
賃貸物件のリスクを早期発見する方法として最も手軽な方法は、自分の目で建物の状態を定期的に確認することです。外壁のひび割れや、屋根瓦のズレや破損、ベランダや階段のサビ、共用部のぐらつきなどは、オーナーでも気付ける箇所です。
また、室内の場合は水漏れ跡やカビの発生、床の沈み込みなどがないかをチェックすることも大切です。小さなサインを放置すると、やがて大規模な修繕が必要になるケースもあります。日常的に所有する賃貸物件を見回ることは、リスクを最小限に抑えることにつながるのです。
インスペクションを依頼する
専門家による「住宅診断(インスペクション)」を受けるのも効果的です。建築士などの専門家が建物の状態を調査し、劣化の有無や修繕が必要な箇所を報告してくれます。
外見ではわからない柱や基礎部分の劣化、配管や給排水設備の異常など、プロならではの視点で問題を早期に発見できます。費用はかかりますが、建物の寿命を延ばし、将来的な大規模修繕のコスト削減にもつながるでしょう。
自分で物件の状況を判断するのが難しいと感じるオーナーは、専門家の診断を取り入れることをおすすめします。
賃貸物件の点検・修繕を行う管理会社に相談する
管理会社に物件を任せている場合は、定期的な点検や修繕について相談するのが有効です。管理会社は建物管理のプロとして、外壁や屋根の劣化、共用部の不具合などを把握していることが多く、オーナーに代わって修繕の手配も行ってくれます。
借主からの細かい相談も集まるため、現場の声を通じて老朽化のサインを早期に知ることができるでしょう。オーナーが直接見落としがちな部分も、管理会社のサポートによりリスクを減らすことが可能です。
賃貸経営に役立つ情報を知るなら「ビズアナオーナー」
当社が提供している無料の収支管理サービス「ビズアナオーナー」は、賃貸経営を行っているオーナーが利用する無料の収支管理サービスです。
月々の収支データを無料で簡単に自動でデータ化し、わかりやすいビジュアルで経営状況を把握することができます。
また、ビズアナオーナーの会員限定で、補助金や節税、空室対策に関する最新の情報やダウンロード資料なども随時配布しています。
その他にも、賃貸経営に役立つサービスも特別価格や無料で利用いただくことが可能です。
是非、「ビズアナオーナー」を無料登録してみてください。
【賃貸経営にも役立つコンテンツをラインナップ!】
- 収支報告書を事務局に送るだけで毎月の収支管理ができる!しかも無料!
- AI賃料査定レポートで設備による賃料の増減を簡単に把握できる
- 統計調査レポートで周辺の商業施設・教育施設やハザードマップなどの情報が得られる
ビズアナオーナーは、賃貸経営の最新情報を知りたい不動産オーナー様におすすめです!