公開日:2020.12.11 / 最終更新日:2024.11.21 確定申告 サラリーマン不動産投資 節税不動産所得不動産収入

サラリーマン大家の確定申告。不動産所得と給与所得の違いと節税ポイント

不動産投資を行う会社員、いわゆるサラリーマン大家さんは会社の給与以外にも所得があるため、通常の会社員とは税金の納め方が違います。

今回は、サラリーマン大家さんの所得と確定申告について説明します。

サラリーマン大家の確定申告

サラリーマンのような給与所得者は、あらかじめ給与から所得税が源泉徴収されるため、税務署で確定申告をすることはほとんどありません。

一方で、不動産所得は、給与所得のように自動的に源泉徴収されません。そのため、原則として自分で収入や必要経費を計算し、確定申告をしなければなりません。

確定申告とは

確定申告とは、簡単に説明すると「所得税を計算し納付する手続き」のことです。課税対象は、収入から経費を差し引き、算出した所得から各種控除を差し引いた金額です。。

この計算を行う時期は、2月16日~3月15日であることが一般的です。そのタイミングで、前年度(1月1日~12月31日)の所得を計算します。事業開始初年度の場合は、開始月~12月31日までの収支計算を行います。

うっかり確定申告を怠ると「無申告加算税」など、相応のペナルティが発生します。また、意図的で悪質な脱税行為に対しては「故意の申告書未提出によるほ脱法」として「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または、その両方」という厳格な処分が下されます。

確定申告が必要なケース

以下のような場合には、サラリーマン大家として確定申告が必要となります。

  • 不動産所得の収入が20万円を超える場合
  • 給与収入が2,000万円を超える場合

また、不動産所得で損失が発生している場合も、義務ではありませんが確定申告をした方がよいでしょう。損失を確定申告することで、給与所得との損益通算が可能となり、税負担を軽減できるためです。

参考:国税庁「No.2250 損益通算

確定申告のメリット

確定申告には様々なメリットがあります。第一に、適切な経費計上による節税効果が挙げられます。不動産投資に関連する経費を正しく計上することで、課税所得を適正に抑えることができます。

また、確定申告を通じて不動産投資の収支を正確に把握することで、より効率的な投資判断が可能となります。さらに、青色申告を選択することで、最大65万円の特別控除を受けられる可能性もあります。

確定申告をしなかった場合のペナルティ

確定申告を怠った場合、重大なペナルティが課される可能性があります。

時期・納付税額 加算税割合
税務署からの調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合 納付税額×5%
納付税額の50万円以下の部分 納付税額×15%
納付税額の50万円超300万円以下の部分 納付税額×20%
納付税額の300万円超の部分 納付税額×30%

参考:国税庁「延滞税の計算方法

また、納付が遅れた場合には延滞税も発生します。年利2.4%(納付期限から2カ月を経過した場合は年利8.8%)の延滞税が課されるため、経済的な負担が大きくなる可能性があります。

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不動産所得と給与所得を合算する「総合課税」

サラリーマン大家さんの場合、不動産所得(事業所得)に給与所得を含めた、「総合課税」としての確定申告が必要です。ここでは総合課税の確定申告について解説します。

総合課税の考え方

サラリーマン大家を始めても、初年度から黒字になるとは限りません。場合によっては赤字になることもあるでしょう。

そのような場合には、税の公平性という観点から、総体的な所得(合算による総収支)を算出し、適切に課税を行う必要があります。これが総合課税の基本的な考え方です。

また、総合課税として計算した所得が赤字ならば、申告の形態によっては損益通算(黒字の所得と赤字の所得の合算)により還付が受けられることもあります。

総合課税における申告の注意点

確定申告書記載欄にある、給与所得の項目に勤務先からの給与や賞与を記載します。

その際の給与は、以下のように計算します。

収入金額(源泉徴収される前の金額) - 給与所得控除額 = 給与所得金額

源泉徴収前の金額を記載しないように注意しましょう。また、勤務先の源泉徴収未済、つまり年末調整が済んでいない場合にも要注意です。

さらに、不動産所得や給与所得以外の利子所得や配当所得などがある場合にも、正しく記載するようにしましょう。

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確定申告の基本的な流れ

確定申告を円滑に行うためには、年間を通じた計画的な準備が重要です。必要書類の収集から申告書の作成、提出までの一連の流れを理解しておきましょう。

必要書類の準備

確定申告に必要な書類は多岐にわたります。主な必要書類には以下のようなものがあります。

  1. 給与所得の源泉徴収票
  2. 不動産収入の証明書類(賃貸契約書、入金記録など)
  3. 経費関連の領収書や請求書
  4. 固定資産税・都市計画税の納付書
  5. 住宅ローンの年末残高証明書
  6. 保険料の支払証明書
  7. 修繕費用の領収書
  8. 管理委託費用の明細書

特に経費の領収書は、内容が明確に記載されているものを保管し、不動産経営との関連性を説明できるようにしておく必要があります。

確定申告書の作成方法

確定申告書の作成には、主に以下の3つの方法があります。

  • 国税庁のHP
  • 税理士への依頼
  • アプリや確定申告ソフトの利用

国税庁のHPから確定申告書作成コーナーを利用する方法が一般的です。画面の案内に従って必要事項を入力することで、比較的簡単に申告書を作成することができます。特に初めて確定申告を行う方にとっては、分かりやすいでしょう。

税理士に依頼する方法は、より専門的なアドバイスを得られる利点があります。特に、不動産投資を始めたばかりの方や、複雑な経費計算が必要な場合は、専門家のサポートを受けることで、適切な申告が可能になります。

会計ソフトやスマホアプリを活用することで、確定申告に必要な書類や帳票を制作することもできます。当社が提供している無料の収支管理サービス「ビズアナオーナー」なら、月々の収支などを簡単にまとめられるため、確定申告時にも活用することができます。

提出方法と期限

確定申告書類の提出方法や期限について紹介します。

e-Taxでの提出

e-Taxは、インターネットを利用した電子申告システムです。24時間いつでも提出可能で、添付書類の提出も簡略化されているため、非常に便利です。利用にはマイナンバーカードが必要ですが、一度設定してしまえば、次回からの申告がより簡単になります。

税務署への郵送・持参

従来型の提出方法として、税務署への郵送や直接持参があります。郵送の場合は、配達記録が残る方法を選択することをお勧めします。直接持参する場合は、確定申告書の控えに受付印を押してもらうことを忘れないようにしましょう。

確定申告の期限

確定申告の期限は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。ただし、土日祝日により期限が変更になる場合もあります。期限間際は税務署が混雑するため、早めの提出を心がけましょう。

不動産投資で経費として認められる項目

不動産投資における経費の正確な把握と計上は、適切な確定申告を行う上で非常に重要です。

固定資産税・都市計画税

固定資産税と都市計画税は、不動産所有者として必ず発生する税金です。これらは全額が経費として認められる重要な項目です。納付時期を把握し、期限内に納付することで、確実に経費として計上することができます。

また、償却資産税についても経費として認められます。固定資産台帳を適切に管理し、正確な金額を把握しておくことが重要です。

減価償却費

減価償却費は、不動産投資における重要な経費の一つです。建物やその付属設備の価値が時間とともに減少する分を、費用として計上することができます。

建物本体の減価償却率は、木造の場合は耐用年数22年(償却率0.047)、鉄筋コンクリート造の場合は耐用年数47年(償却率0.022)となります。また、エアコンや給湯器などの建物付属設備も、それぞれの耐用年数に応じて減価償却を行うことができます。

参考:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし

管理費・修繕費

日常的な建物の維持管理に関わる費用も、重要な経費項目です。定期的な清掃費用、設備の点検費用、小規模な修繕費用などが含まれます。これらの費用は、適切な記録と領収書の保管が必要です。

また、大規模修繕や設備の取り替えなども、その内容に応じて経費として認められます。ただし、修繕の規模や内容によっては、一括経費計上ではなく、資本的支出として減価償却の対象となる場合もあります。

ローン関連費用

不動産取得のために借り入れたローンの金利は、全額が経費として認められます。これには、ローンの金利だけでなく、団体信用生命保険料や繰上返済手数料なども含まれます。

ただし、ローンの返済元金は経費とはなりません。返済予定表を確認し、金利部分のみを正確に経費計上する必要があります。

その他の経費

仲介手数料

入居者募集時に発生する仲介手数料は、経費として認められます。また、管理会社に支払う契約更新手数料なども、経費として計上することができます。

広告宣伝費

空室対策のための広告費用は、経費として認められます。不動産ポータルサイトへの掲載料、チラシの作成費用、写真撮影費用などが含まれます。

通信費・水道光熱費

物件管理に必要な通信費や、共用部分の水道光熱費は経費として計上できます。ただし、個人的な使用との区分を明確にする必要があります。

旅費交通費

物件の管理や入居者対応のための交通費は、経費として認められます。ただし、通常の通勤経路を外れる場合のみ、追加で発生した費用を計上できます。

経費として認められない項目と注意点

経費として認められない項目を正しく理解することは、適切な確定申告を行う上で重要です。誤った経費計上は、税務調査の対象となる可能性があります。

私生活での支出

日常生活に関連する支出は、たとえ不動産経営と部分的に関連があっても、原則として経費として認められません。個人的な交際費や、家族への支払い、自己使用部分の経費などが該当します。

所得税・住民税

所得税や住民税などの税金は、経費として認められません。これは、これらの税金が収益に対して課される性質のものだからです。

資格取得費用

宅地建物取引士などの資格取得に関する費用は、賃貸経営に直接的に必要な資格ではないため、原則として経費として認められません。

その他認められない経費

罰金や反則金、個人的な寄付金なども、経費として認められません。また、過度な接待交際費も、経費として認められない可能性があります。

青色申告のメリット

青色申告は、不動産投資における税務管理の要となる重要な制度です。この制度を活用することで、より効果的な不動産経営が可能となります。最も大きなメリットは、最大65万円の青色申告特別控除を受けられることです。

また、事業で生じた損失を3年間繰り越して控除できる点も、重要なメリットの一つです。不動産投資の初期段階では、ローン返済や修繕費用などにより損失が発生することが多いため、この繰越控除の制度は非常に有効です。

さらに、適切な帳簿書類の保存により、収支の正確な把握が可能になります。これは将来の投資判断や経営戦略の立案にも役立ちます。加えて、税務調査が入った際も、正確な帳簿があることで円滑な対応が可能となります。

青色申告の申請方法

青色申告を始めるためには、まず「青色申告承認申請書」を準備する必要があります。この申請書は税務署の窓口で入手するか、国税庁のウェブサイトからダウンロードすることができます。

申請書には、個人情報や事業の種類、帳簿の作成方法などを記入します。特に重要なのは申請のタイミングです。事業年度の開始前または事業を開始した日から2ヶ月以内に申請を行う必要があります。例えば、1月に不動産投資を始めた場合、2月末までに申請を完了させなければなりません。

申請書は所轄の税務署に提出します。提出の際は必ず控えを保管しておきましょう。この控えは、将来的に青色申告者としての地位を証明する重要な書類となります。

青色申告特別控除の条件

青色申告特別控除、特に最大額である65万円の控除を受けるためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。

まず、正規の簿記の原則に従った記帳が求められます。具体的には、複式簿記による記帳を行い、仕訳帳や総勘定元帳を作成する必要があります。また、決算時には貸借対照表と損益計算書の作成も必要となります。

近年では、e-Taxによる申告または電子帳簿保存も要件の一つとなっています。

また、確定申告は必ず期限内に行う必要があります。期限を過ぎてしまうと、青色申告特別控除を受けることができなくなってしまう可能性があるため、注意が必要です。

参考:国税庁「No.2072 青色申告特別控除

記帳・帳簿の付け方

青色申告では、日々の取引を正確に記録することが極めて重要です。基本となるのは現金出納帳です。これには日々の現金の収支を記録し、常に正確な残高を把握できるようにします。

総勘定元帳では、取引の種類ごとに収入と経費を分類して記録します。不動産所得に関する取引を適切に管理することで、経営状況の把握が容易になります。

固定資産台帳は、建物や設備の管理に不可欠な帳簿です。購入価格、取得日、減価償却費の計算など、資産に関する重要な情報を記録します。修繕や改修の履歴も、この台帳で管理することで、将来の修繕計画の立案にも役立ちます。

これらの帳簿は、取引が発生したらなるべく早く記録することが重要です。また、領収書などの証憑書類は必ず保管し、定期的に帳簿との照合を行うことをおすすめします。

近年は、クラウド会計ソフトなどのデジタルツールを活用することで、より効率的な記帳管理が可能となっています。これらのツールを使用することで、自動仕訳機能や領収書のデータ化など、様々な便利な機能を利用することができます。

不動産投資の収支管理は、無料で利用できる「ビズアナオーナー」が便利です。ビズアナオーナーとは、管理会社から提供される収支報告書をアップロードすることにより、各部屋の賃貸料や出費を視覚的に表示するサービスです。

定期的な帳簿の見直しも忘れてはいけません。月次で収支を確認し、必要に応じて修正や調整を行うことで、年度末の確定申告作業がより円滑になります。特に初めて青色申告を行う方は、税理士などの専門家に相談しながら、正確な記帳の習慣を身につけていくことをおすすめします。

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