不動産投資に火災保険は必要?適用範囲や保険料の相場も紹介
不動産投資におけるリスク対策のひとつとして、火災保険への加入があります。
では、不動産投資にはなぜ火災保険が必要なのでしょうか。また、火災保険の適用範囲や保険料の相場についても確認しておきましょう。
不動産投資は火災保険の加入が必須!
不動産投資を行うのであれば、物件に火災保険をかけるのは必須です。その理由となる火災保険に加入するメリットを紹介します。
火災や自然災害のリスク対策として合理的
法律で義務づけられているわけではありませんが、無保険では火災や自然災害のリスクが大きすぎるため、不動産投資では火災保険に必ず加入すべきです。
賃貸人の過失による火災の場合、オーナーと入居者という関係性であれば、原状回復義務の観点から入居者に賠償責任を問うことは一応可能です。とはいえ、現実問題として、入居者にそれだけの経済力や資本力がないことも多いでしょう。
また、隣家からの類焼の場合や、自然災害による被害など、誰にも責任を求められないケースもあります。
そんな場合も、火災保険に加入していれば、契約の範囲で補償が受けられます。その代わりに保険料の負担がありますが、もし火災などが起こってしまったときに受ける損失の大きさを考えれば、保険料を負担して備えておくほうが合理的です。
保険料を経費計上できるなどのメリットも
火災保険への加入は、リスクヘッジというだけでなく、経営上のメリットもあります。具体的には、負担した保険料は経費として認められます。
不動産投資では、以下の計算で求められる不動産所得に対して税金が課せられます。
不動産所得=総収入(家賃収入など)-経費
つまり、経費として計上できる金額が大きいほど不動産所得の金額が減り、課せられる税金も抑えられます。
もしものときに備えるという意味では、火災保険に加入しなくても、単純にお金を積み立てておくという方法もあります。しかし、火災保険に加入すれば、保険料として支払った分は経費として計上できるため、保険料を負担しない場合に比べると節税効果があるといえます。
また、単に積み立てただけのお金は、積立額以上にはなりません。預金利息はつきますが、いまの金利状況ではわずかでしょう。より積極的に運用する方法もありますが、その場合はリスクが生じます。そのため、いざというときに必要な資金が不足するおそれがあります。
もしもに備えるという意味では、契約した保険金額が受け取れる火災保険が適しています。
なお、火災保険は基本的に「掛け捨て」ですが、一部、積立型の商品もあります。保険料を支払うのがどうしても損に感じてしまう、という方は積立型の火災保険を検討してみてもよいでしょう。
火災保険の適用範囲と特約
火災保険は、どういった損害を補償してくれるのでしょうか。
火災保険の具体的な内容を紹介します。また、適用範囲外のものでも、契約時に特約をつけて補償内容を充実させられます。
火災・爆発・破裂・落雷
まずは「火災」です。
次に、それに類似するものとしてのガス爆発などの「爆発・破裂」があります。
そして「落雷」、雷による被害を補償します。
これらの補償はすべての火災保険で補償範囲として含まれている、火災保険の基本補償と呼べるものです。3つの補償だけの火災保険を指して「ストレートファイヤー」とも呼びます。
これ以外の補償内容は、商品やプランによっては補償範囲に含まれなかったり、外したりできるものです。火災保険を検討するときは、よく補償範囲を確かめましょう。
なお、注意点として、地震を原因とする火災は補償対象外です。地震に関連する損害はすべて地震保険の範囲とされているためです。
風災・雹(ひょう)災・雪災
風や雪、雹(ひょう)に起因する損害を補償するものです。
- 台風によって屋根瓦が飛んでしまった
- 雹(ひょう)が降って窓が割れた
- 雪の重みで屋根が傷んだ
上記のようなケースで、損害が補償されます。
水災
洪水による浸水や、大雨による土砂崩れの被害などを補償するものです。
ただし、経年劣化による雨漏りや、開いていた窓からの吹き込みの損害は対象外のため注意しましょう。雨漏りについては、暴風雨によって急激に生じたものであれば補償される可能性があります。
また、地震による津波の被害は、水災ではなく地震保険の補償範囲です。
水濡れ
たとえば分譲マンションの投資で、上階の入居者が水道を閉め忘れてあふれた水によって、自身の部屋が損害を受けたケースなどに適用される補償です。
また、給排水設備の破損やつまりが原因の水漏れも補償されます。
関連記事:賃貸物件での漏水の修理費を負担するのはだれ?アパート経営での水漏れの対処法
飛来・衝突
投石で窓が割られたり、車が激突して壁が壊れたりした場合の損害を補償します。
なお、原因となった相手が特定されている場合は、火災保険ではなく相手方への損害賠償が適用されます。
騒擾(そうじょう)
火災保険でいう騒擾(そうじょう)とは、「大規模な群衆の行動によって生じた被害」のことです。
少しイメージしにくいですが、たとえば物件に面した道路で大規模なデモがあり、群衆が騒いだとばっちりで物件が傷つけられた場合などが該当します。
破損・汚損
物件の中で偶発的に生じた損害を補償します。
たとえば、部屋の模様替えをするために家具を動かしていて、壁を傷つけてしまったり、家具そのものを壊してしまったりした場合などが対象です。
盗難
盗難も火災保険の補償範囲に含まれることがあります。といっても、主な目的は、盗難に伴う住宅の損害の補償です。侵入のために窓ガラスを割られたり、カギを壊されたりした場合です。
盗難の被害そのものも含まれますが、補償される金額には上限があり、盗まれたものの金額がすべて補償されるわけではありません。
不動産投資家向けの特約
多くの保険会社で、火災保険に不動産投資家向けの特約(オプションの補償内容)を用意しています。代表的なものを紹介しましょう。
なお、ここで紹介する特約がすべての火災保険にあるわけではありません。また、保険会社によって特約の名称は異なります。
家賃損失補償特約
家賃損失補償特約は、一定の範囲で家賃収入の減少を補償してくれる特約です。
物件が火災などに見舞われると、退去者が出たり、しばらく入居者募集ができなかったりして家賃収入が途絶えることがあります。そのようなときの備えとして、家賃損失補償特約は有効です。
家主費用補償特約
物件内で入居者が死亡し、原状回復や遺品整理のための費用が必要になったとき、その費用を補償する特約です。
建物管理賠償責任補償特約、建物付属電気的・機械的事故補償特約
マンションやアパートなどの施設の欠陥や、管理上の不備などに起因する事故でオーナーが損害賠償責任を負ってしまった場合、補償が受けられる特約です。
不動産投資の火災保険について押さえておくべきポイント
火災保険は、さまざまな保険会社が提供しているため、どれを選べばよいか悩んでしまいます。保険料や火災保険を利用するときのポイントを紹介します。
保険料の相場
火災保険の保険料は、物件の規模や補償内容によって変動します。そのため、一概に相場をお伝えするのは難しいです。
ワンルーム投資の場合で、多くのオーナーが月あたり約5万~10万円の保険料を負担しているともいわれていますが、あくまでもひとつの目安です。一棟所有であれば、数十万円の単位になることも珍しくはありません。
保険料を抑えるコツはある?
少しでも保険料を抑えたいと考えるなら、「適切な補償内容にする」ということが重要です。
補償内容が手厚いほど、保険料は高くなります。しかし、保険料を抑えるために補償内容を省けば、保険料は抑えられるかもしれませんが、いざというときに必要な補償が受けられず、本末転倒になってしまいます。
火災保険の仕組みをよく理解し、物件にとってどんな補償がどれくらい必要なのかを見極めることが大切です。
たとえば、高層階のワンルーム投資であれば、水災の補償の必要性は高くないかもしれません。水災の補償を抑えたり、外したりして保険料を抑えられます。
また、そもそもの保険金額の設定方法にも注意しましょう。火災保険などの損害保険は、生命保険や医療保険とは仕組みが異なり、設定した保険金額のそのままの額を受け取れるわけではありません。
火災保険は、物件に生じた損害を補償するのが目的です。そのため、物件の価額に対して過剰な保険金額を設定しても、超過する分は支払われません。
ムダのない保険金額を設定しておかないと、保険料が無意味に上昇してしまいます。
保険会社や保険商品は数多くあります。そのなかの何がベストな保険なのかは、物件ごとに違います。
保険に詳しいファイナンシャルプランナーや、多くの事例を見てきている不動産会社の担当者などに相談してみることをおすすめします。
火災保険が適用されるかの判断は難しい
不動産投資では、想定外の事態が発生したときにしっかりと対応できるかどうかが重要です。迅速な対応ができれば入居者への印象がよくなり、結果的に空室率の低下にもつながります。
しかし、火災保険に加入したあと、実際に損害が発生したときに申請が通るかどうかは状況によって違います。
不動産投資家は、これから加入しようとしている、もしくは加入している保険がどのような損害に適用されるかどうかをしっかりと理解しておくことが重要です。
一方、適用外だと思っていたものが、実は補償範囲だったというケースもあります。
そのため、専門家にサポートしてもらえる体制を日ごろから作っておきましょう。
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