公開日:2024.09.04 / 最終更新日:2024.10.02 賃貸管理 水漏れ修理費漏水

賃貸物件における漏水は誰の責任?原因別の考え方や修繕・賠償の費用負担について解説

天井付近を指さして何かをチェックする夫婦

国土交通省の調査によると、マンションでは5軒に1軒で漏水・水漏れが経験しています。

賃貸物件の場合、配水管などの居住に必要な設備について、入居者は原則として修繕義務を負いません。しかし、漏水の責任が入居者にある場合、修理費や損害賠償を請求できる可能性があります。

賃貸物件における漏水は、誰が責任を負うべきなのでしょうか。国土交通省が作成した「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」に基づき、漏水の原因別に解説します。

賃貸物件の20.1%で漏水・水漏れが起きている

賃貸物件における漏水は誰の責任?原因別の考え方や修繕・賠償の費用負担について解説

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果」によると、過去に水漏れ事故が発生したことのあるマンションの割合は20.1%でした(雨漏りは10.7%)

漏水・水漏れの発生件数は、築年数が古くなるにつれて増加します。完成年次が昭和49年以前のマンションでは、46.2%が水漏れによるトラブルを経験していることが分かっています。

賃貸物件で漏水が発生したときに問題となるのが、入居者と貸主(オーナー)のどちらが責任を負うのかという点です。

国土交通省の「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」でも述べられている通り、賃貸住宅における修繕について、入居者は原則として責任を負いません。ただし、漏水の原因が入居者にある場合は、修理費や損害賠償を請求できる可能性があります。

漏水の責任や過失が誰にあるのか、原因ごとに分けて考えることが大切です。

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【原因別】賃貸物件の漏水による修繕義務は誰が負う?

賃貸物件における漏水は誰の責任?原因別の考え方や修繕・賠償の費用負担について解説

賃貸物件で漏水が発生すると、破損した排水管や、被害を受けた設備の修繕が必要になる場合があります。

賃貸物件における漏水の原因別に、修繕義務を誰が負うのかについて解説します。

入居者に責任のない漏水・水漏れ

配水管の老朽化など、漏水の責任が入居者にない場合、入居者は原則として修繕義務を負いません。

賃貸借契約において、「修繕は借主が行う」などの特約が含まれる場合も、入居者に修理費を請求することは原則できません。最高裁判所の判例において、そういった修繕特約は貸主の責任を免除するものに過ぎず、借主に修繕義務を課すものではない旨が示されています。

また排水管など、建物の主要構造部分に関する修繕について、修繕特約は無効であると判示されています。入居者に責任のない漏水・水漏れは、原則としてオーナー側が修繕義務を負うことを理解しておきましょう。

入居者の過失による漏水・水漏れ

ただし、入居者の故意・過失が原因で漏水が発生した場合、入居者に対して修理費を請求できる可能性があります。故意・過失とは、“借主の利用の仕方が通常の生活の範囲を超えている特段の事情がある場合”です。

民法400条では、賃貸借契約における善管注意義務(“賃借人として社会通念上要求される程度の注意を払って賃借物を使用する義務”)について定めています。入居者が通常の範囲を超えて水回り設備を使用し、漏水を発生させた場合、善管注意義務違反を理由に入居者の責任を問えます。

例えば、以下のような事例が該当します。

  • 風呂場の水の止め忘れ
  • 洗濯ホースの取り付け不良
  • 水道凍結の恐れがある寒冷地で水抜きを怠った

こうした事例では、入居者とよく話し合い、費用負担について相談するとよいでしょう。

複数の過失者による漏水・水漏れ

入居者だけでなく、複数の過失者による漏水が発生した場合はどうでしょうか。例えば、国土交通省の「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」で紹介された以下の事例です。

“入居する物件を決めるに当たって、洗濯パンのサイズを不動産仲介会社に電話で確認したところ、入るという回答であったため入居を決めました。実際に引っ越しをしてみたら、洗濯機が入らず不動産仲介会社に言ったところ、担当者が無理矢理、配水管を押し込んで洗濯機を設置しました。

数回、洗濯機を使い、3日間不在にしたところ、洗濯機の配水管より漏水し、部屋のカーペットの貼り替えが必要な状態です。不動産仲介会社は、不在にする際、洗濯機への給水栓を止めなかったのが悪いといって、こちらが全額負担で修理するように言ってきています。全額、費用負担しなければならないですか。”

このように過失者が複数の場合、それぞれの過失者が、過失の程度に応じて損害を負担する必要があります。ただし、費用負担の割合について、法令上の明確な基準は設けられていません。

当事者同士で十分に話し合い、誰にどの程度の過失があるのかを明らかにするとよいでしょう。

【原因別】賃貸物件の漏水による損害賠償責任は誰が負う?

賃貸物件における漏水は誰の責任?原因別の考え方や修繕・賠償の費用負担について解説

賃貸物件における漏水・水漏れが原因となり、民事訴訟に発展する場合もあります。例えば、水漏れが階下の部屋にまで広がり、他の居住者の家財を損傷させてしまったケースです。

この場合の損害賠償責任を誰が負うかは、修繕費用の負担に関する問題と同様に、漏水の原因別に分けて考える必要があります。

入居者に過失がある場合

入居者に明らかな過失がある場合は、オーナーではなく、入居者が損害賠償責任を負うことが一般的です。

損害賠償の範囲は、原則として“通常発生する損害の範囲”に限られます(民法416条1項)。例えば、以下のような事例を考えてみましょう。

“風呂の水を止め忘れ、部屋が水浸しになったほか、下の部屋にも水が漏れてしまいました。大家から、部屋の床の張り替え、下の部屋の天井の張り替えを要求されました。全面張り替えの工事見積もりが来ており、高額ですが支払わなければならないですか。

また、下の部屋のTVに水がかかり壊れたとして賠償請求がきていますが、支払わなければならないですか。”

この場合、部屋の床および下の部屋の天井の張り替えは、漏水により通常発生し得る損害の範囲と見なされます。また水漏れが階下の部屋に達した場合も、その部屋にある家財(TVなど)が故障することが十分に考えられます。

そのため、入居者は床や天井の張り替え工事にかかった費用や、階下の部屋の居住者からの賠償請求の両方に対し、責任を負わなければなりません。損害賠償の金額については、上記の事例の場合、故障したTVと同等品(中古品)を購入する価格です。

入居者が貸主への通知を怠った場合

入居者に過失がない漏水の場合は、水漏れによって生じた損害をオーナー側が補償しなければなりません。

ただし、入居者が水漏れの事実を知っていたにもかかわらず、オーナー側に通知しなかった場合は例外です。善管注意義務への違反を理由として、入居者に対し損害賠償を請求できる可能性があります。賃借人(入居者)は、賃借物に修繕の必要がある場合、貸主に通知する義務を負っているからです(民法615条)。

特に、入居者が貸主への通知を怠り、水漏れが階下の部屋にまで拡大したような事例では、入居者が損害賠償責任を負います。

賃貸物件の漏水が原因で増えた水道費の負担は?

賃貸物件における漏水は誰の責任?原因別の考え方や修繕・賠償の費用負担について解説

賃貸物件で漏水が発生し、修理に時間がかかった場合、水道費が通常よりも高くなる可能性があります。

オーナーが修繕義務を果たさず、水道費が増えた場合は、通常月との差額をオーナー側が補償しなければなりません。

ただし、入居者は水道費を請求するに当たって、“通常月との水道使用量の差が、修理しないことにより水が止まらなかったことに起因するか(修繕義務を果たさないことと損害との因果関係)”を明らかにする必要があります。

このように、賃貸物件の漏水の責任を誰が負うかは、個別事情を考慮して判断する必要があります。入居者との話し合いで解決するのが困難な場合は、管理会社など賃貸経営の専門家に相談するとよいでしょう。

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