自主管理でよくあるトラブル。大家さんが直面する問題とその対策とは
入居者対応や家賃回収など、賃貸経営に不可欠な業務を自ら行うことを「自主管理」といいます。自主管理には、管理委託手数料がかからないなどのメリットがある反面、入居者とのトラブルなどにも対応しなければなりません。
ここでは、自主管理で発生する家賃滞納や督促の対策や修繕や点検業務における注意点を詳しく解説します。
自主管理の主な業務内容
自主管理を行う大家は、多岐にわたる業務を担当することになります。これらの業務を適切に遂行することで、物件の価値を維持し、入居者満足度を高めることができます。以下、主要な業務について詳しく見ていきましょう。
入居者募集と契約
入居者募集は、物件経営の成否を左右する重要な業務です。適切な入居者を見つけることで、長期的な安定収入を確保し、トラブルのリスクを軽減できます。
まず、物件の特徴や立地条件を最大限に活かした広告を作成しましょう。オンラインの不動産ポータルサイトや地域の情報誌など、効果的な媒体を選択することが重要です。広告では、単に部屋の広さや設備を列挙するだけでなく、周辺環境や交通の利便性など、入居希望者が重視するポイントを強調します。
内見対応では、丁寧な説明を心がけます。物件の魅力だけでなく、管理方針や地域のルールなども説明し、入居後のミスマッチを防ぐことが大切です。質問には誠実に答え、隠し立てのない対応を心がけましょう。
入居審査では、身元確認や収入確認を適切に行いましょう。職業や年収、家族構成などの基本情報に加え、過去の賃貸履歴なども確認するとよいでしょう。ただし、過度に厳しい審査基準は入居者確保の障害となる可能性があるため、バランスが重要です。
契約書の作成と重要事項説明は、法的トラブルを防ぐ上で極めて重要です。賃貸借契約書には、賃料、契約期間、更新条件、解約条件、禁止事項など、必要な事項を漏れなく記載します。契約書の制作や契約作業の部分のみを仲介会社に依頼することも可能です。
家賃収集と管理
家賃の収集と管理は、安定した収入を確保するために欠かせない業務です。
家賃の支払い方法は、入居者の利便性と大家の管理のしやすさを考慮して設定しましょう。一般的には、銀行振込や口座引き落としが多く利用されています。最近では、クレジットカード決済やスマートフォンアプリを利用した決済方法も増えています。複数の支払い方法を用意することで、入居者の希望に柔軟に対応できます。
家賃の入金確認と記録は、確実に行う必要があります。エクセルなどの表計算ソフトを使用して管理する方法もありますが、専用の物件管理ソフトを利用すると、より効率的に管理できます。入金状況を定期的にチェックし、滞納があった場合は速やかに対応することが重要です。
建物・設備のメンテナンス
適切なメンテナンスは、物件の価値を維持し、入居者の満足度を高めるために不可欠です。計画的かつ効率的なメンテナンス体制を構築しましょう。
定期的な建物点検は、問題を早期に発見し、大規模な修繕を未然に防ぐ上で重要です。外壁や屋根、配管設備など、建物の主要部分を定期的にチェックし、必要に応じて補修を行います。
設備の修理・交換は、入居者からの連絡を待つだけでなく、予防的に行うことも大切です。エアコン、給湯器、換気扇など、使用頻度の高い設備は計画的に点検し、必要に応じて部品交換や全体の更新を行います。
長期修繕計画の策定と実行も重要です。計画的な修繕により、物件の価値を長期的に維持することができるため、必要な資金を計画的に積み立てていくことをおすすめします。
また、災害対策も忘れてはいけません。耐震補強や防水工事など、安全性を高める工事も計画的に実施しましょう。これらの対策は、入居者の安全を確保するだけでなく、物件の競争力向上にもつながります。
入居者対応とクレーム処理
入居者との良好な関係を築き、トラブルを未然に防ぐことは、自主管理において非常に重要です。迅速かつ適切な対応を心がけ、信頼関係を構築しましょう。
入居者からの問い合わせやクレームには、迅速に対応することが基本です。後ほど紹介しますが、問い合わせの内容は様々ですが、多くは設備の不具合や騒音問題、共用部分の利用方法などに関するものです。これらの問題に対しては、まず入居者の話をよく聞き、状況を正確に把握することが重要です。
そのためには、日頃からのコミュニケーションも重要です。定期的な挨拶や、建物の改修工事の事前告知など、積極的に情報を共有することで、入居者との信頼関係を築くことができます。また、アンケートなどを通じて入居者の意見や要望を聞く機会を設けるのも良いでしょう。
退去時の手続きと原状回復・敷金精算について
入居者が退去(立ち退き)する際には、大家が立会う必要があります。部屋の傷や汚れなどを確認しながら、原状回復費用について誰がどの部分を負担するのか、業者と協議します。
原状回復費用の負担割合はトラブルになることが多いので、修繕個所は業者と話し合いながら明確な根拠を示さなければなりません。
この立会いにより敷金の精算金額が決まりますので、部屋の状況を細く確認する必要があります。
借主が負担する箇所は敷金から差し引くことになり、残金があれば借主に返還します。
退去時の注意点
・借主による明らかな傷・汚れは費用を請求する
借主の故意・過失による明らかな傷や汚れはしっかり修繕費用を請求しましょう。退去後に発見してから報告するとトラブルの原因になってしまいます。
・退去理由を聞く
借主から退去理由を聞いておきましょう。「上階の騒音問題に悩まされていた」「家賃が高い」「設備が古く、住み心地が悪い」などといった理由が聞けるかもしれません。
退去理由を参考に、改善点を見つけましょう。
自主管理で起こりやすいトラブルと対策
自主管理では様々なトラブルに直面する可能性があります。特に発生頻度の高いトラブルとその対策について詳しく解説します。
家賃滞納問題
家賃滞納は、自主管理における最も一般的かつ深刻な問題の一つです。適切な対策を講じることで、リスクを大幅に軽減することができます。
家賃滞納の予防策
家賃滞納を防ぐためには、事前の対策が重要です。まず、入居審査を厳格化しましょう。収入証明書の確認、過去の賃貸履歴の照会、保証人の設定などを通じて、入居者の支払い能力と信頼性を慎重に評価します。
家賃債務保証会社の利用も効果的な対策の一つです。家賃保証会社を利用することで、滞納リスクを軽減し、確実な家賃収入を確保することができます。ただし、保証会社の選択には慎重を期す必要があります。保証内容や手数料などを比較検討し、信頼できる会社を選びましょう。
前家賃制度の導入も検討してもよいかもしれません。家賃を前月に支払ってもらうことで、滞納リスクを低減できます。ただし、入居者の負担が増えるため、導入する際は十分な説明と理解を得ることが大切です。
滞納時の対応手順
では、家賃滞納が発生した際には、どのような対応策が必要なのでしょうか。
・支払日を過ぎたらすぐに連絡する
家賃の滞納が発生したら、電話などですぐに連絡を取ることが重要です。最初の連絡が遅れると、入居者から「あまり大切ではないのか?」と軽んじられてしまい、家賃の支払いが毎月ルーズになる可能性があります。
入居者と連絡がつかない場合は、滞納している旨をポストに投函しましょう。その上で、滞納家賃をどう回収するかを考えなければなりません。
・分割での支払いが可能かどうかを打診する
督促では支払期日を指定しますが、滞納分の家賃は分割すれば支払いが可能なのか聞いてみましょう。
・連帯保証人に連絡をする
連帯保証人は借主と同様に家賃の支払義務が生じます。したがって、連帯保証人について連絡と督促を行います。
借主が保証会社を利用している場合は家賃を立て替えてもらえるため、保証会社に連絡しましょう。
・法的手段の検討
督促を行っても支払いがない場合は、法的措置を検討します。ただし、家賃を滞納していることを理由に、直ちに退去を求めることはできません。一般的に契約解除事由に該当するのは、家賃滞納が3ヵ月以上続いているケースです。
解除を通告しても退去しない場合は、建物明け渡し請求を裁判所に申し立てることになります。
家賃滞納時の対応についてはこちらで詳しく紹介しています。
新型コロナウイルスの影響で家賃を滞納した場合
・住宅確保給付金を利用する
下記に該当する場合は、住宅確保給付金の制度があることをお知らせしてみるとよいでしょう。
・住宅確保給付金の概要
新型コロナウイルスの影響で、離職・廃業後2年以内である場合や個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合など、一定の条件で住宅確保給付金を申請することができます。(令和2年度中に新規申請して受給を開始した方に限り、令和3年1月1日以降は最長で12か月まで延長することが可能)
市区町村ごとに定める額上限に家賃額を原則3か月間(延長は1回まで最大9か月間)まで支給されます。
詳しくは、厚生労働省ホームページで確認ができます。
(参考:厚生労働省「住居確保給付金 制度概要」)
家賃回収で大家がやってはいけないこと
・家賃滞納者の部屋に立ち入って、請求する
借主の許可なく強引に部屋に入り、長時間の居座りや滞納の督促を行うと、不法侵入で罪に問われる可能性があるので、絶対にやめましょう。
・深夜の時間帯に督促の連絡や訪問
貸金業法21条では、午後9時~朝8時の督促やはり紙、立看板等で周囲の人に家賃滞納を知らせる行為や、1日に何度も督促する行為などが禁止されているので気をつけましょう。
ペットトラブル
ペットの飼育に関するトラブルは、他の入居者とのコンフリクトにつながる可能性が高く、慎重な対応が求められます。適切なルール作りと対応により、多くの問題を未然に防ぐことができます。
ペットトラブルの予防には、明確なルールの設定が重要です。まず、どの種類のペットを飼育可能か、サイズ制限はあるかなどを明確にしましょう。例えば、犬や猫の場合、体重制限を設けるなどの対応が考えられます。共用部分でのマナーについても、リードの使用義務や糞尿の処理方法などを定める必要があります。また、鳴き声や臭いについての基準を設け、他の入居者への配慮を促すことも大切です。
これらのルールを、入居時の契約書や重要事項説明書に明記し、入居者に十分な説明を行いましょう。さらに、飼育するペットの情報(種類、大きさ、写真など)を事前に登録してもらう制度を導入することで、管理をより確実なものにできるでしょう。
ペットに関するトラブルが発生した場合は、まず当事者双方から状況を詳しく聞き取ることから始めます。その際、感情的にならず、冷静に対応することが重要です。ペットは飼い主にとって家族同然の存在であることを理解し、共感的な態度で問題解決に当たりましょう。
事前に定めたルールに基づいて適切な対応を取りますが、必要に応じて獣医師や動物行動学の専門家のアドバイスを受けることも検討します。また、類似のトラブルが起きないよう、ルールの見直しや環境改善を行うなど、再発防止策も講じる必要があります。
水漏れ・設備故障
迅速な対応が求められるのが、水漏れや設備の故障といったトラブルです。適切な予防策と緊急時の対応体制を整えることが、被害を最小限に抑える上で重要です。
水漏れや設備故障を未然に防ぐためには、定期的な点検と予防保全が欠かせません。配管、電気設備、給湯器などの主要設備を定期的にチェックするスケジュールを作成し、実施します。
入居者への適切な使用方法の説明と注意喚起も重要です。設備の正しい使用方法を説明し、異常を感じた際の早期報告を促すことで、小さな問題が大きなトラブルに発展するのを防ぐことができます。
緊急時に備え、24時間対応可能な連絡体制を構築しておくことも1つの方法です。オーナー自身や管理会社、信頼できる業者の連絡先を入居者に周知しておきましょう。また、水道、電気、ガスなど、各種設備に対応できる業者とのネットワークを事前に構築しておくことで、緊急時にも迅速な対応が可能になります。
緊急時には、まず入居者の安全確保を最優先し、その後速やかに修理や復旧作業を行います。また、必要に応じて近隣住民への説明や謝罪も忘れずに行いましょう。このような丁寧な対応が、長期的な信頼関係の構築につながります。
騒音・入居者間トラブル
騒音問題や入居者間のトラブルは、物件の評判に直結する重要な問題です。これらのトラブルを未然に防ぎ、発生した場合も適切に対応することが、良好な住環境の維持につながります。
トラブルを予防するためには、入居者への適切な教育が重要です。騒音や生活マナーに関するルールを文書にまとめ、入居者に配布することで、意識の向上を図りましょう。
また、季節の変わり目など、定期的に注意事項を伝えることも効果的です。例えば、夏季には冷房の使用マナー、冬季には暖房機器の使用に関する注意喚起を行うなど、状況に応じたコミュニケーションを心がけましょう。これらの取り組みにより、入居者同士の相互理解と協力を促進し、トラブルの発生を最小限に抑えることができます。
トラブルが発生した場合は、まず当事者双方から状況を詳しく聞き取ることから始めます。その際、中立的な立場を保ち、双方の言い分を公平に聞くことが重要です。必要に応じて、他の入居者や第三者からも情報を集め、客観的な事実関係の確認を行います。
深刻な場合は、警察や弁護士など、専門家の介入を検討することも必要です。ただし、多くの場合は、双方が納得できる解決策を提案し、合意を目指すことが望ましいでしょう。
問題解決後も状況を見守り、必要に応じて追加の対策を講じることが大切です。例えば、防音対策の強化や、コミュニティ形成のためのイベント開催など、長期的な視点での取り組みも検討しましょう。
自主管理におけるリスクやトラブルの軽減策
自主管理を成功させるためには、様々なリスクやトラブルに備える必要があります。適切な対策を講じることで、多くの問題を未然に防ぎ、発生した場合も迅速かつ効果的に対応することができます。ここでは、リスク軽減のための効果的な方策について詳しく解説します。
専門家との連携
自主管理とはいえ、全てを一人で抱え込む必要はありません。適切なタイミングで専門家の力を借りることで、多くのリスクを回避し、より効率的な管理を実現することができます。
弁護士との連携は、法的なリスクを軽減する上で非常に重要です。賃貸借契約書の作成や改定、滞納者への法的対応、トラブル時の対処方法など、法律に関わる事項について専門的な助言を受けることができます。定期的に契約書のチェックを依頼したり、難しい判断を迫られる場合に相談したりすることで、法的トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
不動産業者との協力も有効な策の一つです。物件の適正な家賃設定や、地域の不動産市場の動向把握、効果的な入居者募集方法など、専門的な知識やノウハウを活用することができます。また、自主管理では難しい広範囲での物件紹介も期待できるため、空室対策としても有効です。地域の不動産事情に精通した業者と良好な関係を築くことで、様々な面でサポートを受けられるでしょう。
税務や会計処理については、税理士や会計士との連携が欠かせません。確定申告や経費処理、節税対策など、専門的な知識が必要な分野です。適切な会計処理を行うことで、税務調査などのリスクを軽減することができます。また、収支の適切な管理は、長期的な経営戦略を立てる上でも重要です。
ITサービスの導入(管理ソフト、オンライン決済など)
近年、賃貸物件管理におけるIT技術の活用が急速に進んでいます。これらの技術を適切に導入することで、管理業務の効率化とサービス品質の向上を図ることができます。
物件管理ソフトの活用は、自主管理の効率を大きく高めます。これらのソフトウェアでは、入居者情報や契約内容の一元管理、家賃入金状況の自動チェック、メンテナンス履歴の記録と計画立案など、多岐にわたる機能を利用できます。複数の物件を管理している場合は特に有効で、煩雑な事務作業を大幅に削減することができるでしょう。また、データの一元管理により、迅速な情報確認や分析が可能になり、経営判断のスピードと質を向上させることができます。
オンライン家賃決済システムの導入も検討しましょう。クレジットカードやスマートフォン決済、口座自動引き落としなど、入居者にとって便利で確実な支払い方法を提供することができます。これにより、家賃の確実な回収と入金管理の簡素化が可能になります。また、リアルタイムでの入金状況確認により、滞納の早期発見と対応が可能になります。入居者にとっても、わざわざ銀行に行く手間が省けるなど、利便性が向上するメリットがあります。
入居者とのコミュニケーションツールとしてのIT活用も重要です。LINEやメールを活用した迅速な連絡体制の構築、オンライン申請システムの導入(修繕依頼、退去申請など)、入居者向けポータルサイトの開設などが考えられます。これらのツールを通じて、入居者とのコミュニケーションを円滑化し、サービス品質の向上につなげることができます。24時間365日の問い合わせ対応が可能になるなど、入居者満足度の向上にも寄与するでしょう。
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