アパートのトイレ修理は誰の責任?大家さんが負担すべき事例と理由を徹底解説

アパート経営では避けられない設備トラブル。その中でもトイレの故障は、入居者の生活に直結する問題です。
「賃貸人(大家さん)が負担すべき修繕ケース」と「入居者負担となるケース」を、民法の規定や実務ポイントとともにわかりやすく解説します。
費用負担の判断基準を押さえて、トラブル防止と入居者満足度アップに役立てましょう。
アパートのトイレが故障したときの費用負担は誰がする?
トイレの故障は日常生活に大きな影響を与えるため、早急な対応が求められます。
しかし、いざ修理を行う際に大家さんが負担するべきなのか、それとも入居者が費用を負担するべきなのか、という疑問が生じることも少なくありません。
今回は、賃貸アパートのトイレ故障時における費用負担について詳しく解説します。
大家さんがトイレの修理費用を支払うケース
大家さんがトイレの修理費用を負担するのは、主に通常使用していての故障、自然災害時や設備の不備、老朽化による交換などのケースが挙げられます。
入居者がトイレを適切に使用していたにもかかわらず、経年劣化や設備不良によって故障した場合は、大家さんが修理費用を負担することになります。
トイレ自体が寿命を迎えた場合、新しいものへ交換する費用も大家さんの負担です。
また、自然災害(地震、水害、台風など)による損傷は、原則として建物の所有者(大家)が対応しますが、火災保険や地震保険の適用可否によって実質的な費用負担が変わります。
以下は、大家さんがトイレの修理費用を負担するケースの一例です。
ケース | 具体例 | 法律的根拠・注意点 |
---|---|---|
通常使用による故障 | 経年劣化による部品の故障 | 民法606条に基づき、賃貸物の通常使用による損耗や劣化は大家さんが修繕義務を負う。 |
自然災害による損傷 | 地震や台風で配管が破損、水漏れが発生 | 火災保険や地震保険が適用される場合もあり、大家さんが負担するのが一般的。 |
設置不備による故障 | 配管の施工不良で水漏れや詰まりが発生 | 設置時の問題は大家さんの責任となり、修理費用を負担する必要がある。 |
老朽化による交換 | トイレの設備が寿命を迎えた場合(便器やタンクの交換など) | トイレの設備寿命(約10〜15年)を超えた場合、交換費用は大家さん負担となる。 |
入居直後の故障 | 前回入居者に原因があるトラブル | 入居後すぐに問題が発生した場合は大家さん側で対応する必要がある。 |
関連記事:賃貸物件での漏水の修理費を負担するのはだれ?アパート経営での水漏れの対処法
経年劣化によってトイレが故障した場合
ウォシュレットが寿命で動作しなくなった場合など、トイレの設備自体が古くなり、自然に壊れてしまった場合は大家さんの負担です。
民法606条では「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕」は、大家さんの義務と規定されており、入居者に過失がない場合は修理費用を負担します。
参考:民法 | e-Gov 法令検索
入居者がトイレの修理費用を支払うケース
入居者の不注意による故障や、管理会社や大家さんに連絡せず修理した場合、不具合を放置したことによる故障は、入居者側に負担義務が生じます。
例えば、紙おむつなどの異物をトイレに流して詰まらせたり、誤って便器を破損したりするケースです。
これらの場合は民法第415条(債務不履行)に基づき、故意または過失による損害として修理費用を負担しなければなりません。
以下は、入居者がトイレの修理費用を負担するケースの一例です。
ケース | 具体例 | 注意点・根拠 |
---|---|---|
不注意や過失による故障 | 異物を流して詰まらせた、便器を破損したなど | 民法第415条(債務不履行)に基づき、故意または過失による損害は入居者負担。 |
修繕義務免除特約がある場合 | 賃貸借契約書に「修繕義務免除特約」が記載されている場合 | 特約により、通常使用による故障でも入居者が負担する可能性がある。 |
管理会社や大家さんに連絡せず修理した場合 | 勝手に業者を手配して修理を行った場合 | 修理が必要だったのか確認できないため、大家さんが費用負担を認めない可能性がある。 |
不具合を放置して悪化させた場合 | 水漏れやつまりを放置し、床や壁に損傷が広がった場合 | 放置による損害拡大は入居者の責任とみなされる。 |
ペットや子供による損傷 | ペットの爪とぎで壁や床に傷がついた、子供の落書きや汚損 | 入居者の管理責任として修理費用負担が求められる場合あり。 |
手入れを怠ったことで故障した場合
軽度な不具合(水漏れやつまりなど)を放置した結果、床材や壁材などに損傷が広がった場合、修繕費用は入居者が負担します。
不具合の報告を怠ったことで、大家さん側の管理責任から外れるため、放置による損害は入居者の責任とみなされるのです。
大家さんに無断で修理した場合
大家さんや管理会社を通さずに修理してしまうと、さまざまな問題が発生します。
入居者が自己判断で業者を手配して修理を行った場合、修理内容や原因について大家さん側で確認できません。
例えば、故障原因が設備の老朽化によるものであっても、入居者から事前の報告がない場合は、修理費用を入居者に請求せざるを得ない可能性があります。
また、賃貸契約書に「故障時は速やかに管理会社または大家さんへ報告する」などの規定が記載されていたにも関わず、入居者が勝手に修理を行った場合は契約違反といえるでしょう。
大家さんに無断で修理した場合の事例
大家さんに無断で入居者が修理した場合の事例とフローチャートをご紹介します。
- トイレの水漏れが発生した際に、入居者が独自に業者を呼び修理を依頼した。
- 修理後に大家さんへ報告したところ、「事前連絡なしでは費用負担できない」と判断された。
- 修理費用(例:10,000円〜20,000円程度)は入居者の自己負担になった。
アパートの賃貸借契約書で大家さんが気をつけるべきこと
賃貸借契約書は、大家さんと入居者双方の権利や義務を明確にする重要な書類です。
しかし、契約書の内容が不十分だと後々トラブルが発生するかもしれません。
特に法律に沿わない契約内容は、無効とされる可能性もあるため注意が必要です。
大家さんが賃貸借契約書を作成する際に気をつけるべきポイントと、賃料減額のリスクにならない対策について詳しく解説します。
入居者に原因がない場合は原則大家さんの責任になる
賃貸借契約書は、大家さんにとって重要な書類であり、後のトラブルを防ぐために事前に内容を確認しなければなりません。
特に民法606条は、賃貸借契約における大家さん(賃貸人)の修繕義務を規定しており、賃貸物を適切に使用収益できる状態に保つための重要なルールです。
以下は、民法606条に基づいてトイレに関する修繕義務をまとめたものです。
事例 | 状況 | 対応 | ポイント |
---|---|---|---|
事例1: 経年劣化によるトイレの故障 | トイレの配管が経年劣化で水漏れを起こし、使用が困難になった。 | 賃貸人(大家さん)が修繕義務を負い、速やかに修理を手配する義務がある。 | 経年劣化による故障は「通常損耗」に該当し、入居者の責任ではないため、大家さんが費用を負担する。 |
事例2: 賃借人の過失による詰まり | 賃借人(入居者)が不適切な物を流してトイレを詰まらせた。 | この場合、賃借人の過失によるものとされ、修理費用は賃借人が負担する。 | 民法606条第1項に基づき、大家さんの修繕義務が発生しない。 |
事例3: 保存行為としての調査 | トイレからの水漏れが下階に影響を与えており、賃貸人が原因調査のために部屋への立ち入りを求めた。 | 賃貸人は保存行為として調査・修繕を行う権利があり、賃借人は正当な理由なくこれを拒否できない。 | 緊急時には事前通知なしで立ち入り可能(民法606条第2項)。 |
事例4: 修繕義務免除特約の場合 | 契約書で「トイレの軽微な修繕は賃借人負担」とする特約がある場合。 | 特約が有効であれば、軽微な修繕(例えば便座交換など)は賃借人が費用を負担する必要がある。 | 特約は民法上有効ですが、内容が不明確であったり、軽微な修繕の範囲を超えて賃借人に過度な負担を強いる場合、裁判で無効と判断される可能性が高くなります。 |
基本規定として、大家さんには賃貸物の使用および収益に必要な修繕を行う義務があります。
例えば、雨漏りや水道管の破損など、建物の使用に支障をきたす不具合は、速やかに修繕する必要があるのです。
ただし例外規定として、修繕が必要となった原因が「賃借人の責めに帰すべき事由」による場合、賃貸人には修繕義務がありません。
つまり、部屋を借りている側の不注意や過失による故障、水漏れなどの不具合を放置して悪化させた場合などがこれに該当します。
特約を契約書に記載しても修理費を支払う場合がある
修繕義務免除特約とは、賃貸借契約において、大家さん(賃貸人)が通常負うべき修繕義務を免除する内容を定めた特約です。
この特約は民法606条の任意規定であるため、当事者間の合意によって追加ができます。
例えば、「便座の部品やウォシュレットなどの付属設備の修繕費用は賃借人が負担する」「トイレの便座が通常使用で壊れた場合、賃借人が自ら交換し、その費用を負担する」などの修繕義務免除特約は、大家さん側にとって有効な事例になります。
一方で、大規模な配管工事や屋根の補修など費用負担が大きいものは、大家さんの責任とされる場合が多い傾向です。
建物の主要な構造部分に関する修繕を入居者に負担させる特約は、裁判でも無効とされる可能性があるため、特約を付けた場合でも大家さんが一切の修繕義務を負わないというわけではありません。
保険の適用範囲を契約書に記載する
大家さん側が契約書に保険の適用範囲を記載することで、事前にトラブルを防ぎ、双方が契約内容を明確に把握できます。
例えば、トイレの配管で水漏れが発生し、下階の住戸にも被害が及んだ場合、火災保険に付帯されている「水濡れ補償」が適用される場合があります。
下階への損害については、入居者側が「個人賠償責任保険」で対応するケースが多く、大家さんに対して損害が生じた場合は「借家人賠償責任補償特約」が適用されることがあります。
このように大家さんの保険適用範囲を明確にすることで、貸主の修繕義務を負う時と負わない時のリスク対応を明確にできるでしょう。
アパートのトイレを新しくすることは空室対策になる
賃貸アパートの空室対策は、大家さんにとって大きな課題です。
特に競争が激しいエリアでは、物件の魅力をいかに高めるかが重要でしょう。
その中でも「トイレのリフォーム」は、比較的手軽に実施できる改善策として注目されています。
トイレリフォームが空室対策としてどのような効果をもたらすのか、修理の費用相場やメリット、注意点について詳しく解説します。
トイレの修理や交換にかかる費用相場
空室対策を考える上で、大家さんが負担する可能性のあるトイレ修理や交換の費用についてまとめました。
軽度なつまりの除去は、約4,000円〜8,000円で行うことが可能です。
一方、重度なつまりの場合は、ローポンプや高圧洗浄機を使用する必要があり、費用は50,000円以上になることがあります。
以下は、大家さんが負担する可能性のあるトイレ修理や交換の費用をまとめた表です。
修理内容 | 費用相場 | 備考 |
---|---|---|
軽度なつまり除去 | 4,000円~8,000円 | ラバーカップなどを使用した簡易的な作業 |
重度なつまり除去 | 10,000円~20,000円 | ローポンプや高圧洗浄機を使用した作業 |
配管詰まりの修理 | 8,000円~50,000円 | 距離や汚れ具合で価格が大きく変動する |
水漏れ修理(軽度) | 0円~2,000円 | ボルト・パッキン交換など簡易的な作業 |
水漏れ修理(部品交換あり) | 4,000円~30,000円 | 排水管ホースやタンク内部品の交換など |
水が出ない・水が溜まらない | 8,000円~30,000円 | トイレタンクを交換する場合は費用増加 |
水が止まらない | 6,000円~30,000円 | トイレタンクを交換する場合は費用増加 |
便器交換 | 20,000円~300,000円 | トイレ本体の種類によって費用が変動(組み合わせ型、一体型トイレ、タンクレストイレなど) |
ウォシュレット交換 | 30,000円~50,000円 | 部品代+工事費込み |
水漏れ修理は、軽度なものであれば業者に依頼しても2,000円程度で可能です。
ただし、部品交換が必要な場合には4,000円〜30,000円ほどかかるケースがあります。例えば、タンク内部のパッキンやボールタップなどの交換です。
便器交換はトイレ本体の種類によって費用が異なり、組み合わせ型トイレは20,000円〜40,000円、一体型トイレは70,000円〜18万円、タンクレストイレは10万円〜30万円程度が相場です。
耐用年数が経過しているトイレは故障やトラブルが頻発したり、修理が困難になる場合があります。
そのため、修理費用が高くなる前に大家さん側で交換を検討するのが賢明でしょう。
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トイレの修理で入居者の満足度向上が期待できる
水漏れや詰まりなどのトイレトラブルは、入居者の日常生活に大きなストレスを与えます。
そのため、迅速かつ適切に修理を行うことで、入居者は安心して生活できるでしょう。
修理だけでなく、温水洗浄便座や節水型トイレなどの最新設備を導入することで、快適性が期待できます。
特に賃貸物件では水回りの使いやすさが入居者の満足度に直結し、物件価値を高める重要な要素になるからです。
トイレ周りの環境を整えることが、入居者の充足感を向上させ、長期的な賃貸契約維持につながるでしょう。
水回りの使いにくさはアパートを退去する原因になる
賃貸物件では、水回りの状態や使いやすさが入居者の満足度に関係します。
トイレは毎日使用する設備であり、トラブルが発生すると入居者にとってストレスを与えるからです。
以下は、なぜトイレの使いにくさが退去する理由になるのかをまとめたものです。
退去理由 | 具体的な問題 | 影響 | 対策 |
---|---|---|---|
詰まりや水漏れが頻発する | 排水口の詰まり、水漏れ、タンクの故障など | 日常生活へのストレスが増加 | 定期的なメンテナンスと迅速な修理対応 |
老朽化による見た目の悪さ | 汚れ、黄ばみ、傷などが目立つ | 室内全体の印象が悪化 | トイレ設備の交換やリフォーム |
節水機能や快適機能がない | 節水型トイレやウォシュレットなどの機能不足 | 他物件との比較で魅力が低下 | 最新設備へのアップグレード |
清掃性の悪さ | カビや水垢が発生しやすいデザイン | 衛生面への不安と清掃負担 | 掃除しやすい素材や防汚加工の導入 |
トラブル対応の遅れ | 修理対応が遅い、管理会社との連絡が取りにくい | 信頼関係の低下 | 入居者との円滑なコミュニケーションと迅速な対応 |
例えば、トイレの詰まりや水漏れが頻発する場合、日常生活でトイレが使用できないことで直接的な負担を与えます。
また、トラブル発生時の対応の遅れは、入居者との信頼関係を損なう大きな要因です。
上記のような問題に対処するためには、定期的なメンテナンスと迅速な修理対応、設備の更新、入居者との円滑なコミュニケーションが重要です。
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