賃貸で夜逃げされたら解約していい?入居者に連絡が取れない場合の解決策
賃貸経営をしているオーナーにとって一番怖いことは、家賃収入がなくなることです。しかし、入居者が家賃の支払いが苦しくなるなどの事情から、夜逃げをしてしまうことがあります。
入居者が夜逃げしたとき、オーナーは賃貸借契約を解約し、早く新しい入居者を見つけたいと考えるでしょう。しかし、オーナーから一方的に解約はできないため注意が必要です。
本記事では、入居者に夜逃げされた際のオーナーの対処法を解説します。
夜逃げされたら解約できる?
夜逃げなどで、入居者に解約の意志があるのか確認できない状態で、オーナーから一方的に解約をすることは可能なのでしょうか。
夜逃げと賃貸借契約
入居者が夜逃げすると、部屋には居住している様子がなく、連絡も取れなくなります。
賃貸借契約では「一定期間を超えた不在」について、通知する義務を設けているのが一般的です。つまり、一定期間を超えた無断不在は契約違反に該当します。
夜逃げされた後の部屋状況には、大きく2つのパターンがあります。
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- 家財道具を放置したままでいなくなる
- 家財道具も移動させて、もぬけの殻になっている
家財道具もなくなっている場合は、計画的な夜逃げといえます。
どちらの場合も、まず連帯保証人に連絡をします。入居者に家賃の滞納があれば支払いを請求し、今後の賃貸借契約の継続や解約について協議をします。
連帯保証人は入居者に連帯して債務を負うため、以下の義務があります。
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- 家賃の支払い
- 賃貸借契約の解約
- 退去と明渡し
したがって契約者本人と連絡ができない場合は、連帯保証人が入居者としての責務を果たす必要があります。
オーナーが勝手に解約はできない
入居者が夜逃げすれば連帯保証人が責を負うことになりますが、なかにはその責務を果たさない、あるいは保証人とも連絡がとれないなどになれば、話は複雑になります。
夜逃げ時に、連帯保証人が入居者に代わって賃貸借契約の解約手続きに応じられない場合、オーナーは勝手に賃貸借契約を解約できません。
契約を解約するには、裁判所へ契約解約と明渡し請求訴訟を起こし、法律上の手続きを経る必要があります。
また、訴訟を起こせば自動的に解約できるわけではありません。賃貸借契約は、借地借家法により、オーナーよりも入居者が保護されています。そのため、オーナーからの一方的な契約解約には制限があり、法律上の要件を満たす必要があります。
賃貸借契約解約の条件
賃貸借契約をオーナーから解約するには、正当な事由が必要です。正当な事由は裁判所の判断によって認められます。入居者が解約に応じない場合は、裁判所の判断を仰ぐしかありません。
夜逃げの場合も、入居者の意志が確認できないため、やはり裁判による法的判断が必要です。
ただし一般的には、約1カ月の家賃滞納では、解約の正当な事由として認められません。夜逃げの場合でも、約3カ月の家賃滞納の状態になっていなければ難しいでしょう。
解約の具体的な手順
夜逃げした入居者との賃貸借契約を解約する手順は次のとおりです。
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- 入居者への通知
- 訴状の提出
- 公示送達の申し立て
- 賃貸借契約解約と明渡し
それぞれの手順について詳しく解説します。
入居者への通知
訴訟を起こすためには準備が必要です。
まずは、入居者宛で賃貸借契約解約通知と明渡し請求を書面にします。それを、内容証明・配達証明付きで郵送します。
夜逃げした入居者は住んでいないので、郵便物は戻ってきます。
そこで次の訴訟のステップに移ります。
訴状の提出
賃貸借契約の解約をオーナーから申し出る場合の要件、つまり正当な事由とみなされる約3カ月の家賃滞納の状態となった時点で、裁判所に訴訟を起こします。
家賃滞納を理由として賃貸借契約を解約し明け渡すよう請求する訴状を、裁判所に提出します。裁判所は、訴えられている入居者に訴状を送達します。
しかし、夜逃げした入居者の現住所がわからない場合は、確実に入居者に届けることができません。
そこで、訴状が入居者に送達されたのと同じ効果を得られる、公示送達という方法があります。具体的には、訴状の提出時に公示送達の申し立てを行います。
公示送達の申し立て
公示送達の申し立てを行うには相当な準備が必要です。
なぜなら入居者にとっては契約が解約されるという重要な手続きです。本当に入居者が行方不明であることを証明する必要があります。
そのため、以下の書類を準備します。
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- 入居者の住民票または不在住証明書
- 入居者に送付して戻ってきた内容証明郵便の原本とコピー
- 入居者が住んでいた物件付近で住民に聞き取り調査を行い、入居者が居住していないという調査結果報告書
これらの書類を準備して申し立てを行うと、裁判所の掲示板に一定期間訴状の内容が掲示されます。これは、入居者に送達されたのと同じ効果をもちます。
また訴状には「本訴上の送達を以って本件賃貸借契約を解除する」と明記することを忘れてはいけません。
賃貸借契約解約と明渡し
公示送達がなされ裁判所に掲示後一定期間が経過すると、法的には賃貸借契約の解約が成立します。
しかし、室内に残置物があると、実質上は占拠されていることに変わりはありません。
そこで次に明渡しの強制執行を行います。解約の成立に基づき、裁判所に強制執行の申し立てをします。
執行官は夜逃げをした物件に、明渡しを強制執行する日付を記した文書を掲示します。強制執行はこの日付から約1カ月以内に行われます。
強制執行をする日は断行日といいます。執行官の指示により残置物を搬出し、用意した倉庫などに移動します。後日入居者が荷物を引き取りに来た場合に引き渡すためです。
夜逃げに対処する際の注意点
賃貸借契約を解約し退去を完了させるには、オーナーの行動に制限があり、手続きには時間と費用がかかります。実際に対処する際の注意点を理解しておきましょう。
残置物について
夜逃げした人の室内は、家財道具がそのままになっているケースがほとんどですが、家財道具の所有権は入居者にあります。
賃貸借契約の解約が判決で確定していても、明渡しの強制執行の断行日までは、オーナーであっても室内の物を勝手に処分できません。
勝手に処分すると所有権侵害とみなされるおそれがあります。
また残置物の中には換金できるものもあります。本来、残置物は入居者や親族などに引渡します。しかし、引渡しができない場合には売却手続きをし、売却により得た収入を、明け渡しの強制執行にかかる費用に充当することも可能です。
強制退去の費用
賃貸借契約解約訴訟から明渡し強制執行までの手続きには、以下の費用がかかります。
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- 入居者へ催告する文書の郵送料
- 連帯保証人へ連絡する電話代や文書の郵送料
- 裁判手続きを弁護士に依頼した場合の費用
- 賃貸借契約解約と明渡し訴訟にかかる裁判費用
- 強制執行にかかる費用
これらの費用は予納金として、強制執行の申し立ての時に支払います。
最も金額が大きいのは、強制執行にかかる費用です。残置物の運送費と保管費用が、数十万円かかります。
管理会社との連携
入居者の夜逃げは、前述したように強制執行まで行うと多額の費用がかかります。また訴訟などの手続きを弁護士に依頼するとさらに費用がかかります。
できるだけ費用をかけずに強制執行までの手続きを行うには、管理会社の協力を得ることをおすすめします。
訴訟から強制執行の申し立てまで、必ずしも本人が裁判所に行く必要がないケースもあります。強制執行の申し立ては弁護士以外が代理人となることも可能です。
訴訟のための重要な書類である訴状は、書類作成のみを司法書士に依頼するなどの方法があります。費用をかけずにトラブルを解決する方法を管理会社に相談すると、アドバイスがもらえるでしょう。
また、管理会社が連帯保証人や親族へ粘り強く対応を要請することで、訴訟や強制執行まで至らず解決した事例もあります。
管理会社は日ごろから信頼関係を深めておくと、いざという時には頼りになる存在です。
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