公開日:2021.03.24 / 最終更新日:2023.10.30 賃貸管理 費用立ち退き相場

立ち退き費用の規定とは。内訳や決め方、相場について解説

入居者に立ち退きをお願いする場合、様々な費用が生じます。今回は不動産オーナーが押さえておくべき、立ち退き料の規定について説明します。

賃貸物件における立ち退き料とは

まずは、立ち退き料がどのような費用で、なぜ必要なのかをみていきます。

立ち退き料とは何か?

立ち退き料とは、貸主が借主に退去を求める場合に、借主の損害を補填するために貸主から借主に支払う金銭のことです。つまり、物件の借主に退去してもらう場合に支払う費用です。

立ち退き料は法律用語ではなく、また、法的に明確な支払い義務があるというようなものではありません。

そもそも立ち退きとは

借地借家法の第一節建物賃貸借契約の更新等の第二十八条では、次のように書かれています。

「建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない。」

引用元:借地借家法|e-Gov法令検索

立ち退きは、貸主が賃貸借契約の更新を拒否、もしくは解約を申し出ることを指します。そして、この法令にある「建物の明渡しの条件として、借主に対して財産上の給付をする」というところが、立ち退き料に当たります。

正当事由と認められない場合は、立ち退きそのものが認められません。

正当事由は、落ち度のない貸主にしか認められません。裁判所は、貸主、借主双方の立場を考慮しますが、多くの場合借主の立場を重視します。

たとえば、貸主が建て替えの必要性(老巧化)を訴えても、補強工事によって対応できると判断された場合は立ち退きが認められません。また、貸主が多額の借金を背負っていて、その返済のため賃貸物件を売却したい場合も、それだけでは正当事由になりえません。

ほかには、以下のような立ち退きが認められない判例もあります。

    • (店舗利用の場合)借主にとって現在の店舗がすでに重要な拠点となっており、ほかでは代替し難いと認められる場合
    • 借主が現在の物件に対して、すでに多大な投資をしており、そこから充分な収益を得ており、ほかの代替物件では代用しがたい(不確実性が生じる)場合

立ち退き交渉の時期

期間の定めがある契約であっても、貸主の都合で立ち退きを求める際には、賃貸契約の契約期間満了の1年前~6カ月前までに通告しなければなりません。通告を怠ると、契約は更新となります。

借地借家法の規定はもちろんですが、借主が次の物件を探すためにも一定の期間がかかります。それを考慮し、立ち退きが必要な場合などには早めに通告をすることでトラブルになりにくくなるでしょう。

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立ち退き料の内訳とその決め方

立ち退き料は、借主に生じる費用をまとめて支払います。ここで、立ち退き料の内訳や金額の決め方について説明します。

移転にかかる費用と立ち退き料の内訳

立ち退き料の内訳は大きく分けて次の4つです。

移転にかかる費用

荷物の輸送費や、内装の取り壊し費用があります。

新居の初期費用

新しい物件の家賃、敷金、礼金、仲介手数料、火災保険、地震保険などがあります。

通信関係の費用

新たな電話回線を引く費用やインターネット等の通信費用などがあります。

慰謝料(迷惑料)

新しい物件に移転する際の精神的ストレスなどを考慮した費用です。

もし立ち退きがなければ、借主はその物件を使用し続けることができたと想定されるため、立ち退きにかかる費用は本来は支払う必要のなかったお金です。そのため、新しい物件に移転するための初期費用は、実質的にすべて立ち退き料に換算されるべきであると言えます。

立ち退き料の決め方

立ち退きをお願いする場合、移転先は「移転前と同じように生活や仕事ができる環境」でなければなりません。

住居の場合には、大抵のものは移転先でも使用できるため、引っ越し費用の負担が中心となります。借主がオフィスとして使用していた場合でも、机や椅子、ロッカー、キャビネットなど移動できるものが多いです。

店舗利用の場合は移転できないような内装もあります。移転先で新たな内装の設置費用が必要になるため、その費用が補償の対象と見なされます。さらに、移転の際に休業しなければならないときはその間の補償も必要です。

立ち退き料を決める上では、そこでなければならないという、必然性があるかどうかが重要です。

住居であれば、どうしてもそこに住まなければならない理由は少ないはずです。

しかし店舗や飲食店の場合は、既存客を失い売上が減少する可能性が高くなるため、自ずと補償すべき金額も高額になります。現在とほぼ同等の環境で営業できる物件を探すとなると、条件が限られ、中には以前より賃料が上がってしまうかもしれません。

その場合には「賃料差額補償」といって、移転先の賃料と明け渡し前の賃料との差額分を立ち退き料に加えなければなりません。裁判所による過去の判例においても、この「賃料差額補償」はほぼ認められています。賃料差額の補償期間の目安は、その賃料の2倍未満が2年、2倍以上なら3年、3倍以上なら4年とされています。

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立ち退き料の相場

具体的な立ち退き料の相場を紹介します。

立ち退き料を計算する際の考え方

建物賃貸借契約における立ち退き料の金額は、借主に発生する経済的損失から計算します。

立ち退き料相場は、以下のようになることが多いようです。

住居の場合 賃料の3~6ヵ月程度
オフィスの場合 賃料の6ヵ月~1年分程度
店舗の場合(小売業、物販店) 賃料の1~2年分程度

金額に法的な決まりはない

ただし、立ち退き料は当事者間の納得により決まるもので、明確な規定があるわけではありません。そのため、場合によっては一般的な金額以上の支払いが必要になるケースもあります。

過去の裁判でも、個別の事情を考慮して妥当な立ち退き料の額を決定しています。あくまでケースバイケースであると考えておきましょう。


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