施設賠償責任保険を大家におすすめする理由は?保険料や注意点も紹介

アパートやマンションなどの居住用賃貸物件には、多くの入居者がいるため、大家は万が一の事故などに対して十分に備える必要があります。
なかには保険に加入することを検討する大家も少なくないようです。一般向けの火災保険だけでは補償範囲が限られているため、様々な保険が用意されています。
なかでも施設賠償責任保険は、大家におすすめな保険のひとつです。本記事では、施設賠償責任保険について、おすすめする理由や注意点も合わせて解説します。
施設賠償責任保険とは?
施設賠償責任保険はどういった内容の保険で、どこまで補償してくれるのでしょうか。
施設をめぐる賠償責任が補償される損害保険
施設賠償責任保険とは、なんらかの施設の所有者・管理者が、その施設の構造上の欠陥や管理上の不備、施設の業務を原因とした賠償責任を負ってしまった時に、それを補償する保険です。
施設賠償責任保険は、大きくは損害保険に分類され、中でも、賠償責任保険の一種と考えられます。
賠償責任保険には、ほかに以下のようなものがあります。
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- 個人賠償責任保険
- 請負賠償責任保険
- 生産物賠償責任保険
- 店舗賠償責任保険
それぞれ補償を受けられる人の立場や補償範囲が異なります。施設賠償責任保険はその中でも特に、「施設」をめぐる賠償責任を対象としています。
施設賠償責任保険に加入していると、補償の対象となる事故などが発生した場合、以下が保険金として支払われます。
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- 法律上の損害賠償金
- 賠償金に関する訴訟費用や弁護士の費用
- 事故発生時の応急手当などの緊急措置費用
これらは保険会社や商品により、弁護士費用は含まないなど、違いがある場合があります。
また、生命保険のように、あらかじめ「〇〇万円の保険金」など金額が決まっていません。一定の範囲内で、実際に生じた損害金額を受け取ることができます。
補償範囲
施設賠償責任保険の補償範囲は、大きく分けて2つあります。それぞれ具体的に例を挙げてみていきましょう。
施設の構造上の欠陥や管理上の不備に起因する賠償責任
施設そのものが誰かに損害を与えた場合のことです。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
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- 建物の壁の一部が剥がれ落ち、通行人が負傷した
- 施設内でガス爆発があり施設の一部が倒壊した結果、近隣の建物に損害を与えた
- イベント会場で火災が発生したが、避難経路が明確でなく、逃げ遅れた観客が死亡した
施設の業務(用法)に起因する賠償責任
その施設が何のための施設か、どのような業務(サービス)に使われているのか、といった点を踏まえ、その業務や用法に関連して誰かに損害を与えた場合のことです。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
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- 飲食店の従業員が、熱い飲み物をこぼして客にヤケドを負わせた
- 商店で棚に置いてあった商品が落下し、客に当たって負傷させた
- 施設の従業員が自転車で商品を配達中、通行人と衝突して負傷させた
最後のケースのように、施設の敷地外であっても施設の業務に関する事故であれば補償される場合もあります。
加入方法と保険料
施設賠償責任保険は損害保険の一種ですので、損害保険会社またはその代理店へ申し込むことで加入できます。
一般的な保険加入と同様に補償内容の詳しい説明を受け、保険料の見積もりなどを確認して契約を行います。
保険料は、以下のような項目によって個別に決まります。
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- 施設の種類
- 施設の業務内容
- 面積や入場者数
- 売上高(事業規模)
- 保険金の支払限度額をいくらとするか
そのため、一概にいくらとはいえず、数万〜数十万円まで大きな幅があります。事前に保険会社に相談して見積もりを出してもらいましょう。
大家に加入をおすすめする理由
マンションやアパートなどの居住用賃貸物件も、「施設」の一種です。そのため、賃貸物件の大家にとって、施設賠償責任保険はメリットがある保険です。
莫大な損害賠償リスクに備えられる
施設をめぐるさまざまなリスクが、施設賠償責任保険の対象です。賃貸物件の場合、以下のようなケースなどが考えられます。
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- エントランスの床材が滑りやすく、住民が滑って転び、骨折をした
- 外壁の一部が剥がれ落ち、駐車場に停まっていた来客の車を破損した
万が一死亡事故にまで発展した場合、損害賠償は億単位になることもあります。
起こる確率は低くても、万が一発生した時の損害に対応し切れないリスクに備えて保険に加入しておくべきでしょう。
保険料は必要経費にできる
保険に加入すれば保険料が必要ですが、この出費は建物の火災保険・地震保険と同様に、会計上の必要経費にできます。
賃貸経営で得た収入は、不動産所得として課税の対象です。不動産所得は以下のように計算します。
不動産所得=収入金額-必要経費
つまり、必要経費として計上できる額が多いほど、税額が減ります。
そのため、費用がかかるといっても、全体として賃貸経営で利益が出ているのであれば、適切な経費の使用は節税にもつながります。
保険加入は住人にとっても安心材料
保険に加入していることは、施設を利用する人、つまり賃貸物件の入居者にとってもメリットがあります。
損害賠償金は高額になることも多いです。法律上の賠償責任が認められたとしても、それを負うべき大家に実際の資力がなければ十分に補償されず、被害者が泣き寝入りというケースもないわけではありません。
保険に加入することで、そのような事態を防いで、入居者が適切な補償が受けられるようになります。
そのため、施設賠償責任保険に加入している物件は、住人にとっても安心して住める物件だと感じられます。
保険加入のポイント
施設賠償責任保険は賃貸経営をする大家におすすめの保険だと紹介しましたが、実際に加入を検討する際のポイントを確認してみましょう。
補償されないケースに注意
施設賠償責任保険も万能ではありません。施設に関連する事故であっても、補償されないケースがあることには注意しましょう。
補償の対象外となる条件をいくつか紹介します。
従業員の損害
条件として「従業員の損害は補償されない」というものがあります。
施設賠償責任保険は、あくまでも施設の利用者や近隣などを守るためのものです。その施設を運営している人や会社、その従業員が受けた損害は補償されません。
これらについては労災をはじめ、ほかの保険でカバーすべきだと考えられます。
自然災害によるもの
自然災害に起因する損害と思われるものは、施設賠償責任保険では補償されません。
施設賠償責任保険の補償範囲は、施設の構造上の欠陥や管理上の不備、業務に起因するものなど、あらかじめその可能性が予期できるものです。
自然災害は予期できず、また、不可抗力なものと考えられるため、対象外とされています。予期することが難しい、戦争などに関連するものも同様です。
そのほかの補償されないケース
上記2つ以外にも、施設賠償責任保険の範囲外のものとして、以下が挙げられます。
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- 自動車によるもの
- エレベーター・エスカレーターによるもの
- 動物の所有・管理によるもの
- 施設で提供した食物によるもの(食中毒など)
- 請負った仕事の結果によるもの
エレベーター・エスカレーターは施設の一部のように思えますが、これらには専用の保険(昇降機賠償責任保険)があるため、施設賠償責任保険の補償範囲からは外されています。
提供した食物や請負った仕事の結果によるものなども、それぞれ生産物賠償責任保険、請負賠償責任保険といった別の保険があります。
ほかに大家が入っておくべき保険があるか検討してみよう
施設賠償責任保険以外にも、施設やその業務に関連するさまざまなリスクを補償する保険は存在します。
大家が施設賠償責任保険の加入を考える際は、次のような保険も合わせて検討しておくとよいでしょう。
火災保険
一般的に、大家に限らず物件を所有する人は必ず火災保険に加入します。
特に大家の場合は、建物は自身の収入を支える大切な財産です。当たり前ですが、建物を失うことは重大なリスクです。
基本的なリスクヘッジとして、建物と家財を補償対象とする火災保険には加入しておくべきです。
地震保険
火災保険はさまざまな自然災害のリスクから物件を守りますが、地震・噴火・地震に伴う津波などは被害規模が大きすぎるため、補償範囲外です。
そのため、地震保険にも加入して、地震に対する補償もしっかり備えておきましょう。
家賃損失補償保険
火災などの事故があった際、やむをえず空室期間が続き、収入が減ってしまうことを補償するタイプの保険もあります。
火災保険の賃貸オーナー向け特約(オプション)として提供されていることもある補償です。
家主費用補償保険
名称はさまざまですが、物件内でのいわゆる「孤独死」に関連して、部屋の清掃費用や空室による減収を補償する保険もあります。
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