公開日:2024.07.24 / 最終更新日:2024.09.26 賃貸管理 不動産投資 節税賃貸経営

経営セーフティ共済で不動産賃貸業の節税が見込める?法人化の可否についても紹介

不動産投資

経営セーフティ共済は中小企業が直面する経営リスクの対策として、無担保・無保証での資金調達を可能にする制度です。

不動産賃貸業においては、個人事業主ではなく法人化し、経営セーフティ共済に加入することで節税効果が期待できることがあります。

経営セーフティ共済の概要と不動産賃貸業で法人化を検討すべきケースについて詳しく解説します。

経営セーフティ共済とは

経営セーフティ共済で不動産賃貸業の節税が見込める?法人化の可否についても紹介

経営セーフティ共済は、中小企業基盤整備機構が運営する、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための相互扶助制度です。

中小企業には、売掛金の回収不能や資金繰りの悪化など取引先の倒産は大きな経営リスクとなります。

経営セーフティ共済に加入しておけば、このような状況でも無担保かつ無保証人で資金調達が可能になります。

無担保・無保証で取引先倒産のリスクに備える

経営セーフティ共済は、取引先が倒産したときに、無担保かつ無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで融資を受けられる制度です。中小企業には資金調達のハードルが低く、安心して利用できる点が特徴です。

たとえば、月額10万円の掛金を5年間継続した場合、最大600万円の融資を受けられ、連鎖倒産を防ぐための重要な資金となります。

取引先の事業者が倒産し、売掛金などの回収が困難になったときは、その事業者との取引の確認が済み次第、借り入れができます。なお、返済期間は借入額に応じて変わり、5〜7年です。

掛金の支払いで節税効果が期待できる

経営セーフティ共済の掛金は5,000円から20万円までの範囲で選択でき、法人であれば損金に、個人事業主であれば必要経費に算入できます。

掛金は加入後の事業状況にあわせて増額や減額が可能で、積立限度額は800万円です。

さらに経営セーフティ共済を解約する際には、解約手当金を受け取れます。解約手当金は、掛金の支払いを12カ月以上継続していれば8割、40カ月以上継続していれば全額返還されます。

なお、解約手当金を受け取ると雑収入となり、課税対象となります。ただし解約は加入者の意思でタイミングを決められます。

そのため、掛金を支払うときに損金あるいは経費として節税し、事業で損失が発生したときに解約手当金を受け取り、損失と相殺するといった使い方も可能です。

一時貸付金制度がある

経営セーフティ共済に掛金を支払うと、取引先が倒産しなくても資金繰りが悪化した場合は、掛金の95%を上限に有利子で一時貸付金を受けられます。

借入期間は1年で返済は一括償還が必要ですが、1年後に同額や減額して借り換えも可能です。なお借入金の使途は事業資金に限られ、審査に通過する必要があります。

不動産賃貸業は経営セーフティ共済で節税できる?

経営セーフティ共済で不動産賃貸業の節税が見込める?法人化の可否についても紹介

結論からいうと、個人事業主として不動産賃貸業を営んでいる場合、経営セーフティ共済の掛金を必要経費に算入できないため、節税効果が得られません。

その理由と不動産賃貸業が、経営セーフティ共済を用いて節税できる方法を解説します。

不動産賃貸業で経営セーフティ共済の節税メリットを享受する方法

経営セーフティ共済が対象とする所得は事業所得です。個人事業主の事業所得とは、商品の販売やサービスの提供の対価として得た利益のことです。

土地や建物を貸し出す不動産賃貸による利益は、不動産所得に分類されます。不動産所得は事業所得ではないため、経営セーフティ共済の対象外です。

そのため事業所得はなく不動産所得のみを得ている個人事業主は、経営セーフティ共済に加入してもメリットが受けられません。

一方、個人事業主としてではなく法人として加入すれば、掛金を全額損金として計上が可能となり、節税効果が期待できます。

不動産賃貸による収入は、個人事業主の場合は不動産所得となりますが、法人であれば事業所得として扱うことが可能です。そのため、個人事業者が法人化すれば経営セーフティ共済に加入して、節税効果を受けられます。

ただし、不動産賃貸業のように取引先事業者に対する売掛金債権などが生じない業種は、貸付けの対象とならない場合があるため注意が必要です。

経営セーフティ共済の加入条件

経営セーフティ共済には、個人事業主または法人で、資本金や従業員数のいずれかが条件にあてはまる中小企業者が加入できます。

  • 会社法に定められた会社
  • 引き続き1年以上事業を継続している中小企業者

また、会社の形態が次のいずれかに該当する必要があります。

  • 株式会社
  • 有限会社
  • 合名会社
  • 士業法人
  • 合資会社
  • 合同会社

なお、医療法人、農事組合法人、NPO法人、外国法人は加入できません。

加えて業種ごとに資本金の額または出資の総額に対する条件と、常時使用する従業員数に関する条件のどちらかを満たす必要があります。

業種 資本金の額または出資の総額 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業その他の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

引用:経営セーフティ共済「経営セーフティ共済の加入資格

不動産賃貸業で法人化を検討すべきケースとは

経営セーフティ共済で不動産賃貸業の節税が見込める?法人化の可否についても紹介

法人化とは、個人事業主としておこなってきた事業を、新たに法人を設立して引き継ぐことです。

不動産賃貸業を法人化すると、経営セーフティ共済の節税効果を得られるのみでなく、さまざまなメリットが期待できるでしょう。しかし、法人化にはメリットのみでなくデメリットも存在します。

ここではまず不動産賃貸業における法人化のメリットとデメリットを詳しく解説し、そのうえで法人化の判断基準ついても説明します。

関連記事:アパート経営を法人化したい!具体的なタイミングやデメリットを解説

法人化のメリット

法人化の最大のメリットは、節税効果です。法人税率の上限は、所得税率の上限よりも低く設定されています。

2024年3月現在、所得税と住民税をあわせると税率は最大55%ですが、法人税率は最大23.2%です。不動産賃貸による収入が大きい場合は所得税として計算するよりも、法人税として計算したほうが、納める税金額は少なくて済みます。

また、法人化すると個人事業主では認められない経費を計上できる場合があり、役員報酬や退職金、福利厚生費などが経費として認められます。

さらに個人事業主の場合は3年となる損失の繰り越しが、法人化すると10年間繰り越すことができ、将来に利益が出た際に税負担を軽減できる対象期間が広がります。

法人化すれば事業の信用力向上にもつながります。一般的に、法人化すると個人事業主よりも取引先からの信頼を得やすくなり、金融機関からの融資を受けやすくなる傾向にあります。

これは、法人のほうが財務状況の透明性が高く、個人事業主よりも永続性が高いと判断されるためです。不動産賃貸業は、多額の資金が必要となる事業です。法人化により金融機関からの融資を受けやすくなり、事業拡大に必要な資金を調達しやすくなる可能性があります。

法人化のデメリット

法人化にはデメリットもあります。

まず法人化には、設立及び運営コストがかかります。設立費コストとしては法人の設立時に、定款作成や登記申請などの費用がかかり、司法書士や行政書士に相談や書類作成依頼をおこなうと報酬の支払いが発生します。

法人化すると運営においてもコストがかかります。法人の場合は、法人税の計算と申告が必要となり決算書類の作成も求められるため、個人事業主のときよりも税務申告が複雑になるでしょう。税理士に依頼する事項が増え、報酬の支払いが増える傾向があります。

また、法人の場合は収益にかかわらず法人住民税を支払う必要があるため、赤字でも毎年最低でも7万円の税金を納める必要があります。

法人化の判断基準

法人化は、必ずしもすべての不動産賃貸業にメリットがあるわけではありません。ではどのような場合に、法人化を検討するべきでしょうか。

不動産賃貸業における法人化の判断基準は、収益の大きさです。収益が大きいほど法人化のメリットは大きくなるでしょう。

法人化を検討するべき年間収益の目安は、所得税と法人税の税率が逆転する水準で、一般的には不動産賃貸による収益が800万円〜1,000万円を超えると、法人化したほうがメリットは大きいと考えられます。

また、将来的に事業を拡大する予定があり、収益水準も800万円〜1,000万円を超えていく予定の場合は、法人化を検討する価値があります。

反対に、収益水準が800〜1,000万円に届かない場合は、法人化しても税金上のメリットはないため、コスト割れする可能性が高いでしょう。

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