公開日:2024.11.06 / 最終更新日:2024.12.25 賃貸管理 修理費賃貸経営

ペットの飼育による原状回復はオーナーが負担すべき?過去の判例も解説

家で猫を飼うカップル

ペットの飼育による傷やにおいの原状回復費用は、原則として賃借人(借主)側が負担します。ペット飼育可のマンションやアパートの場合も、あらかじめ「ペット消毒特約」などを定めていれば、退去時に消毒・クリーニング費用などを請求することが可能です。

ペットの飼育による原状回復の費用負担の考え方や、過去の判例について紹介します。

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ペットによる傷やにおいの原状回復費用は賃借人負担が一般的

ペットの飼育による原状回復はオーナーが負担すべき?過去の判例も解説

国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(以下、ガイドライン)」によると、賃借人(借主)に原状回復の義務が発生するのは、“賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損”が発生した場合です。

飼育しているペットが原因の傷やにおいは、通常の使用による結果とはいえず、借主が原状回復費用を負担するケースが一般的です。国土交通省のガイドラインにおいても、ペットの飼育による原状回復の費用負担について、以下のような考え方が示されています。

“特に、共同住宅におけるペット飼育は未だ一般的ではなく、ペットの躾や尿の後始末などの問題でもあることから、ペットにより柱、クロス等にキズが付いたり臭いが付着している場合は賃借人負担と判断される場合が多いと考えられる。”

ただしペット飼育可の物件の場合、軽度の傷であれば通常の損耗の範囲とみなされる可能性もあります。賃貸借契約を結ぶ段階で、オーナー・賃借人が原状回復の費用負担について合意しておくことが望ましいでしょう。

 

ペット禁止の物件なら、借主に損害賠償を請求することも可能

ペット禁止特約が存在するなど、ペットの飼育が禁止されている賃貸物件の場合、ペットに起因する傷やにおいは、借主の用法違反(用法義務違反)によるものと考えられます。国土交通省は以下の見解を示しています。

“賃貸物件でのペットの飼育が禁じられている場合は、用法違反にあたるものと考えられる。”

用法違反とは、借主が契約で定められた使用目的に反して、賃貸物件の一部またはすべてを使用することです。禁止されているペットの飼育により、賃貸物件に損害が生じた場合、用法違反があったとして損害賠償を請求できます。

ただし債務不履行に基づく損害賠償請求権は、10年間の消滅時効が定められている点に注意しましょう。用法違反があった時点から10年経つと、借主に対して損害賠償を請求できなくなります。

 

ペット禁止特約がなくても、借主の用法違反にあたる可能性がある

賃貸物件によっては、ペット禁止特約がなく、ペットの飼育を明示的に禁止していないケースもあるでしょう。

しかしペット禁止特約がなくても、借主が社会的ルールを守らず、通常の使用の範囲を超えて破損・汚損を発生させた場合、用法違反にあたる可能性があります。

過去の判例から見るペット可物件の原状回復の考え方

ペットの飼育による原状回復はオーナーが負担すべき?過去の判例も解説

ペット可物件の原状回復において、借主にどの程度まで費用負担を求められるのか知りたい方もいるでしょう。平成14年9月27日の東京簡易裁判所判決では、契約書に「ペット消毒特約」の定めがある場合、原状回復費用のうちクリーニング費用を賃借人負担とする判決が出されました(※)。

ここでは、この判例に基づいて、ペット可物件における原状回復の考え方を解説します。

※参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」p86

 

ペットの飼育による破損・汚損についての特約は有効と解釈できる

賃借人とオーナーが結んだ契約書には、あらかじめ以下のような特約が付されていました。

“①室内のリフォーム、②壁・付属部品等の汚損・破損の修理、クリーニング、取替え、③ペット消毒については、賃借人負担でこれらを行うものとする。なお、この場合専門業者へ依頼するものとする。”

判決では、“ペットを飼育した場合には、臭いの付着や毛の残存、衛生の問題等があるので、その消毒の費用について賃借人負担とすることは合理的であり、有効な特約と解される”としています。

賃貸借契約を結ぶにあたって、ペットによる破損・汚損に関する特約を設けることは問題ありません。ただし借地借家法第30条と第37条では、借家人(賃借人)にとって不利と考えられる特約は、その効力が否定されると定めています。そのため室内のリフォームなど、大規模な修繕費用をすべて賃借人に負担させるような特約は、裁判になったときに無効とされる可能性があります。

 

消毒やクリーニングにかかる費用は賃借人負担となる

オーナー側は、特約に基づく原状回復費用として、クロス・クッションフロアの張替え費用、クリーニング費用など合計50万745円の支払いを求めました。しかし判決では、そのうちクリーニング費用の全額5万円を賃借人が負担すべきとしています。

“クリーニングについては、実質的にペット消毒を代替するものと思われ、賃借人負担とする特約は有効と認められるので、その費用全額5万円は賃借人Xの負担とするのが相当である。”
前述の通り「ペット消毒特約」は有効と解されるため、クリーニングにかかった費用は賃借人への請求が可能です。しかしクロスの張替えなど、大規模なリフォーム費用の請求までは難しいでしょう。

事案ごとの個別事情によって異なる面もあるため、まずは弁護士などの専門家や、不動産管理会社に相談することをおすすめします。

あらかじめ契約書に原状回復の条件を明記しておくことが大切

ペットの飼育による原状回復はオーナーが負担すべき?過去の判例も解説

ペットが住む賃貸物件では、原状回復の費用負担を巡って賃借人とのトラブルに発展する可能性があります。

ペットの飼育そのものを禁止したい場合は、賃貸借契約にペット飼育禁止特約を盛り込んでおくとよいでしょう。一般的に、共同生活の安全衛生や秩序維持などを目的として、ペット禁止特約を設けることは不合理ではないとされています。

ペット飼育可の物件の場合は、あらかじめ契約書に原状回復の条件を明記しておくことをおすすめします。国土交通省のガイドラインによると、原状回復に関する費用負担の一般原則は以下の通りです。

  • 賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗などについては、賃借人が負担すべき費用となる
  • 建物・設備などの自然的な劣化・損耗(経年変化)および賃借人の通常の使用により生ずる損耗(通常損耗)については、賃貸人が負担すべき費用となる

たとえば、“飼育ペットによる柱などのキズ・臭い(ペットによる柱、クロスなどにキズが付いたり、臭いが付着している場合)”は、通常の使用方法を超えていると解釈されるため、賃借人に原状回復費用を請求できるでしょう。

契約書を作成するにあたって、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の別表3(契約書に添付する原状回復の条件に関する様式)を活用すると便利です。

また「ペット消毒特約」など、原状回復の費用負担に関する特約も定めておくとよいでしょう。過去の判例でも、ペット消毒・クリーニング費用を賃借人負担とする特約は、合理的であり有効と認められています。

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