不動産オーナーの相続対策は何から始める?大家さんが知っておきたい5つのポイント
賃貸経営を長く続けていると、「所有するアパートやマンションを将来誰に引き継ぐか」「相続税はどのくらいかかるのか」など、相続について考える機会も増えてくるのではないでしょうか。
しかし、「相続対策はまだ先のことだから」「何から始めればいいのかわからない」と、具体的な準備を進められていない大家さんもいるかもしれません。
不動産の相続対策というと、相続税を減らすための節税対策をイメージする方も多いでしょう。
しかし、相続対策で大切なのは、税金の負担を軽減することだけではありません。
不動産を誰に引き継ぐのか、相続税を納めるための資金をどう確保するのか、相続後も安定した賃貸経営を続けられるのかなど、考えておきたいことはさまざまです。
この記事では、不動産オーナーが相続対策を始める際に押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
「そろそろ相続について考えたい」という方は、ご自身の状況を振り返りながら確認してみましょう。
不動産オーナーに相続対策が必要な理由

相続は、誰にとってもいつか直面する可能性のある問題です。
特に、アパートやマンションなどの賃貸物件を所有している場合、預貯金などの財産とは異なる注意点があります。
まずは、不動産オーナーが相続対策を考えておくべき理由を見ていきましょう。
不動産は現金のように簡単に分けられない
預貯金であれば、相続人の間で金額を分けることが比較的容易です。
一方、不動産は現金のように簡単に分割できるものではありません。
たとえば、アパートを1棟所有していて、相続人が子ども2人だった場合、どちらが物件を引き継ぐのか、どのように財産を分けるのかが問題になることがあります。
不動産を共有名義にする方法もありますが、将来的に売却や大規模修繕を行う際、共有者同士で意見が合わず、判断が難しくなる可能性もあります。
また、子どもが必ずしも賃貸経営を引き継ぎたいと考えているとは限りません。
「自分はこのまま賃貸経営を続けたいけれど、子どもはどう考えているのだろう」と感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
こうした問題を相続が発生してから考え始めると、家族に大きな負担がかかることがあります。
誰に、どのような形で不動産を引き継ぐのかを、早い段階から考えておくことが大切です。
不動産を所有していても納税資金が足りないことがある
相続対策で注意したいのが、相続税を納めるための資金です。
相続税は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、金銭で納める必要があります。
不動産は大きな資産ですが、預貯金のように必要なときにすぐ現金化できるわけではありません。
たとえば、複数の賃貸物件を所有していても、毎月の家賃収入からローン返済や修繕費、管理費などを支払っている場合、手元に十分な現金が残っていないこともあるでしょう。
その状態で相続が発生すると、納税資金を確保するために、不動産の売却を検討しなければならなくなる可能性があります。
売却を急ぐことで、希望する条件で売れないケースも考えられます。
そのため、相続税がいくらかかるかだけでなく、「その税金をどのように支払うのか」まで考えておくことが重要です。
相続税対策だけでは解決しない問題もある
不動産の相続対策というと、「できるだけ相続税を減らしたい」と考える方も多いでしょう。
もちろん、税金の負担を抑えることは大切です。
しかし、相続税を減らすことができても、家族の間で財産の分け方について意見がまとまらなかったり、相続後の賃貸経営に支障が出たりしては、十分な対策とはいえません。
相続対策では、大きく分けて次の3つを意識する必要があります。
- 節税対策: 相続税の負担をできるだけ抑える
- 納税対策: 相続税を支払うための資金を準備する
- 遺産分割対策: 家族が財産の分け方で困らないようにする
特に不動産オーナーの場合は、これらに加えて、相続後の賃貸経営をどうしていくかという視点も必要です。
節税だけに目を向けるのではなく、家族や賃貸経営の将来も含めて考えておきましょう。
大家さんが相続対策で押さえておきたい5つのポイント

相続対策の必要性は理解していても、「具体的に何をすればいいのかわからない」という方もいるでしょう。
相続対策にはさまざまな方法がありますが、最初からすべてを実行する必要はありません。
まずは、現在の財産や賃貸経営の状況を把握し、自分にとって必要な対策を考えることが大切です。
ここからは、不動産オーナーが押さえておきたい5つのポイントを紹介します。
所有する不動産や財産の状況を把握する
相続対策を始めるうえで、まず確認したいのが現在の財産状況です。
賃貸物件を所有している場合、物件の数や家賃収入は把握していても、すべての資産や借入金を一覧で整理したことはない、という方もいるのではないでしょうか。
たとえば、
- 所有している土地や建物
- 預貯金や有価証券などの金融資産
- 住宅ローンやアパートローンなどの借入金
- 生命保険の契約内容
- 物件ごとの家賃収入や経費
などを整理してみましょう。
相続税を考える際には、不動産の購入価格や現在の売却価格だけでなく、相続税を計算するための評価額を把握することも必要です。
また、借入金がある場合は、その残高や返済計画も確認しておきたいところです。
財産の全体像がわかっていなければ、どのような相続対策が必要なのか判断することも難しくなります。
まずは「自分が何をどのくらい所有しているのか」を整理することから始めましょう。
誰にどの不動産を引き継ぐか考える
財産の状況を把握したら、次に考えたいのが不動産の引き継ぎ先です。
たとえば、アパートを2棟所有していて、子どもが2人いる場合、それぞれに1棟ずつ引き継ぐ方法が考えられます。
しかし、物件ごとに立地や築年数、収益性、借入金の残高などが異なる場合、単純に1棟ずつ分ければ公平になるとは限りません。
また、相続人のなかには賃貸経営を続けたい人もいれば、不動産を引き継ぐことに負担を感じる人もいるでしょう。
不動産を相続するということは、資産を受け取るだけでなく、建物の維持管理や入居者対応、修繕費の負担なども引き継ぐことになります。
オーナー自身が「子どもに物件を残したい」と考えていても、相続する側が同じ考えとは限りません。
そのため、家族がどのように考えているのかを確認しながら、引き継ぎ方を検討していくことが大切です。
必要に応じて、遺言書の作成などについても専門家に相談するとよいでしょう。
相続税の負担と納税資金を確認する
相続税がどのくらいかかるのかを把握しておくことも、重要なポイントです。
相続税には基礎控除があり、課税対象となる正味の遺産額が基礎控除額を超える場合に、原則として相続税がかかります。
基礎控除額は、次の計算式で求められます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。
ただし、実際の相続税額は財産の内容や適用できる特例などによって異なります。
また、賃貸用不動産は、一定の条件を満たすことで、所有者自身が使用する不動産よりも相続税評価額が低くなる場合があります。
とはいえ、不動産を所有していれば必ず相続税が安くなるというわけではありません。
物件の状況や土地の評価、借入金などによっても結果は変わります。
まずは税理士などの専門家に相談し、相続税額の目安を確認しておくと安心です。
あわせて、預貯金や生命保険など、納税に充てられる資金がどのくらいあるかも確認しておきましょう。
生前贈与や生命保険の活用を検討する
相続対策の方法として、生前贈与や生命保険の活用も考えられます。
生前贈与とは、生きている間に財産を家族などへ贈与することです。
計画的に財産を移転することで、将来の相続財産を減らせる場合があります。
ただし、生前贈与には贈与税の問題があり、相続開始前の一定期間に行われた贈与は、相続税の計算に加算される場合もあります。
また、不動産そのものを贈与する場合は、登記費用や不動産取得税などにも注意が必要です。
一方、生命保険は、相続税の納税資金を準備する方法の一つとして活用できます。
死亡保険金を受け取ることで、相続人が必要な資金を確保しやすくなる場合があります。
ただし、生命保険にも契約内容によって税金の取り扱いが異なるなど、確認すべき点があります。
生前贈与も生命保険も、利用すれば必ず節税になるというものではありません。
それぞれの仕組みを理解したうえで、家族構成や財産状況に合った方法を検討することが大切です。
大規模修繕や今後の賃貸経営について考える
相続対策を考える際には、所有物件の修繕計画にも目を向けてみましょう。
アパートやマンションは、築年数が経過するにつれて外壁や屋根、防水設備、給排水設備などの修繕が必要になります。
こうした大規模修繕は、相続対策の観点からも検討する価値があります。
たとえば、将来的に必要となる修繕を生前に実施することで、現預金が減少し、相続財産の額に影響する場合があります。
また、建物の状態を整えておくことは、相続後の賃貸経営を安定させるうえでも役立ちます。
ただし、大規模修繕にはまとまった費用がかかるため、相続税を減らすことだけを目的に工事を行うのは適切ではありません。
工事の内容や会計・税務上の取り扱いによって、相続税への影響も異なります。
大切なのは、建物の状態や今後の修繕時期、収支状況を確認したうえで、必要な工事を計画的に進めることです。
相続対策と建物の維持管理を別々に考えるのではなく、将来の賃貸経営も含めて検討してみましょう。
相続対策、何から始めればいいかわからないという方へ
ここまで紹介した5つのポイントのなかに、「まだ確認できていない」「具体的な方法をもっと知りたい」と感じるものはありましたか?
不動産オーナーの相続対策にはさまざまな方法がありますが、所有する財産や家族の状況によって、適した対策は異なります。
お役立ち資料「相続対策の新常識 不動産オーナーが今やるべきこと」では、大家さん専門税理士の渡邊浩滋氏が、不動産オーナーに知っておいてほしい相続対策の基本と具体的な方法を解説しています。


この資料でわかること
✅ 不動産によって相続税評価額が下がる仕組み
✅ 相続税対策を考えるうえで押さえたい注意点
✅ 生前贈与や大規模修繕など、今から検討できる対策
「相続対策が必要なのはわかっているけれど、何から始めればいいのかわからない」という大家さんは、ぜひ参考にしてみてください。
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相続対策で注意したい「節税だけを優先しない」という考え方

ここまで紹介したように、不動産オーナーが検討できる相続対策にはさまざまな方法があります。
しかし、対策を進める際には、相続税を減らすことだけを目的にしないよう注意が必要です。
税金の負担を抑えられたとしても、相続後に家族が困ってしまうようでは、十分な対策とはいえません。
ここでは、相続対策を考えるうえで注意したい点を見ていきましょう。
相続税を減らせても家族が困るケースがある
相続税を減らすために、不動産を購入したり、所有している財産の一部を生前贈与したりする方法があります。
しかし、節税効果だけを優先すると、思わぬ問題が生じる可能性もあります。
たとえば、相続税対策として不動産を増やした結果、手元の現金が少なくなってしまうケースです。
相続税の負担を抑えられたとしても、納税に必要な現金が不足していれば、家族が資金の確保に苦労するかもしれません。
また、不動産を複数所有することで、財産の分け方が複雑になることも考えられます。
「どの物件を誰が引き継ぐのか」
「管理や修繕の負担は誰が担うのか」
「賃貸経営を続けるのか、売却するのか」
こうしたことが決まっていなければ、相続が発生した後に家族間で意見が分かれる可能性があります。
相続税を減らすことは大切ですが、それだけで相続対策が完了するわけではありません。
家族が安心して財産を引き継げるかどうかという視点も忘れないようにしましょう。
相続対策は賃貸経営の将来を考えることでもある
不動産オーナーの場合、相続対策と賃貸経営は切り離して考えられるものではありません。
たとえば、現在は安定した家賃収入が得られている物件でも、築年数が経過すれば修繕費が増える可能性があります。
また、地域の賃貸需要や競合物件の状況によっては、将来的に空室が増えたり、家賃を見直す必要が出てきたりすることもあるでしょう。
こうした状況を考えずに不動産を引き継ぐと、相続人が予想していなかった負担を抱えることになるかもしれません。
そのため、相続対策では現在の資産価値だけでなく、
- 今後も安定した家賃収入が見込めるか
- 大規模修繕などにどの程度の費用が必要か
- 借入金の返済がいつまで続くか
- 相続人が無理なく賃貸経営を続けられるか
といった点も確認しておきたいところです。
場合によっては、すべての物件を残すのではなく、一部の不動産を売却して財産を整理することも選択肢になります。
「どれだけ多くの財産を残すか」だけでなく、「どのような状態で引き継ぐか」を考えることも、不動産オーナーにとって重要な相続対策です。
相続対策を始めるために、まず確認しておきたいこと

ここまで読んで、「相続対策は考えなければいけないことが多くて難しそう」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、最初からすべての対策を進める必要はありません。
まずは現在の状況を整理し、できることから少しずつ準備を始めてみましょう。
所有する不動産と収支を整理する
相続対策の第一歩として取り組みやすいのが、所有物件と収支の整理です。
たとえば、物件ごとに次のような情報をまとめてみましょう。
- 物件の所在地や築年数
- 現在の入居状況や家賃収入
- 管理費や修繕費などの支出
- 借入金の残高や返済予定
- 過去の修繕履歴と今後の修繕計画
これらを一覧で確認できるようにしておけば、所有する不動産の現状を把握しやすくなります。
特に複数の物件を所有している場合、毎月の収支報告書を確認していても、物件ごとの収益性や将来の支出まで整理できていないことがあります。
現在どのくらいの収入があり、今後どの程度の費用がかかるのかを把握しておくことは、相続後の賃貸経営を考えるうえでも役立ちます。
また、こうした情報が整理されていれば、将来家族に賃貸経営を引き継ぐ際にも、物件の状況を伝えやすくなります。
相続対策のためだけではなく、日頃の賃貸経営を見直す機会としても取り組んでみましょう。
家族と今後の不動産について話し合う
財産状況の整理とあわせて考えておきたいのが、家族との話し合いです。
相続について話すことに抵抗を感じる方もいるかもしれません。
「まだ元気なのに相続の話をするのは早いのではないか」
「子どもに財産の話をするのは気が進まない」
と感じることもあるでしょう。
しかし、相続が発生してから初めて家族が財産の状況を知ると、何をどのように引き継ぐべきか、判断に困ることがあります。
特に賃貸物件の場合、所有者が変わっても入居者との契約や建物の管理は続いていきます。
相続人が賃貸経営についてほとんど知らない場合、管理会社との連絡や修繕の判断などに戸惑うことも考えられます。
まずは、家族が賃貸経営についてどのように考えているのか、話を聞いてみることから始めてもよいでしょう。
そのうえで、必要に応じて税理士や弁護士などの専門家に相談し、具体的な対策を検討していくことが大切です。
まとめ|不動産の相続対策は早めの準備が大切

不動産オーナーの相続対策では、相続税を減らすことだけでなく、納税資金の確保や財産の分け方、相続後の賃貸経営についても考えておく必要があります。
所有するアパートやマンションは大切な資産ですが、現金のように簡単に分けられるものではなく、引き継いだ後も維持管理や修繕などが必要です。
そのため、相続対策を後回しにせず、元気なうちから準備を進めておくことが大切です。
まずは、
「現在、どのような財産を所有しているのか」
「誰に不動産を引き継ぎたいのか」
「相続税や将来の修繕に備える資金はあるのか」
といった点から、ご自身の状況を振り返ってみましょう。
すべてを一度に決める必要はありません。
現状を把握し、家族と話し合いながら、必要な対策を一つずつ考えていくことが、将来の安心につながります。
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