アパート経営での修繕積立金の目安と考え方。大規模修繕のタイミングは?

安定したアパート経営を行うには、綿密な資金計画が欠かせません。
計画をする中で、修繕にかかる費用はどれくらい積み立てる必要があるのかを悩むオーナーも多いのではないでしょうか。アパートの修繕は長期間にわたって何度も行うため、全体像を把握していなければ現実的に検討するのは難しいでしょう。
アパート経営での修繕積立金の目安や考え方、修繕を実施するタイミングなどを詳しく解説します。また、アパートオーナーなら知っておくべき注意点もあります。
アパート経営における修繕積立金とは
まず、アパート経営でなぜ修繕積立金が重要なのか、基本的な考え方や修繕のタイミングについて説明します。
修繕積立金の目的
建物は、年数が経過するとともに必ず劣化が発生します。どんなに頑丈に建てられていても、時間がたつと修繕が必要な部分が出てきてしまうのは、不動産の宿命といえるでしょう。
適切に修繕されていないアパートは、古びて見えたり、不便であったりして入居者がなかなか集まりません。さらに、安全や防犯の面でも問題があるため、修繕は非常に重要です。
修繕積立金は、建物に修繕が必要になった場合に備えて定期的に積み立てておくお金を指します。
分譲マンションであれば、区分所有者が管理組合を通じて積み立てます。
賃貸物件の場合、民法では賃貸人、つまり物件オーナーが建物の劣化について修繕の義務を負うものとされています。ただし、特約によりこの義務を負わないという取り決めは可能です。
とはいえ、一般的には、アパート経営で修繕が必要になれば、オーナーや管理会社主導で行われるものです。そして、そのための費用は修繕積立金として、オーナーが準備する必要があります。
オーナーが積み立てるお金は、家賃収入がもとになっているといえるため、実質、入居者が支払っているようなものだと考えるかもしれません。しかし、たとえ空室が多くても、修繕積立金を減らしてよいわけではありません。あくまでもオーナーには修繕義務があります。
修繕のタイミング
一口に修繕といっても、軽微なものから大規模なものまでさまざまで、修繕の内容によって頻度やタイミングは異なります。
大きくは、次の3つに分けて考えます。
- 大規模修繕
- 小規模修繕
- 原状回復のための修繕
それぞれの違いやタイミングを詳しく説明します。
大規模修繕
大規模修繕は、アパート全体に及ぶような大きな修繕を指します。具体的には、以下に関するものです。
- 外壁
- 屋根
- 階段
- 廊下
- 外構部分
- 給排水設備
- 室内装備(トイレなど)で交換を要するもの
足場を組んで行うような大規模な工事になることもあり、入居者の生活を一部、制限せざるをえないようなものもあります。
こうした大規模修繕は、約10〜30年の周期で行われます。頻繁ではありませんが、規模が大きい工事のため多額の費用がかかります。
小規模修繕
小規模修繕は、大規模修繕にまでは至らないような規模の修繕や、大規模修繕を要するかどうかの検査にあたるようなものをいいます。具体的には、以下のような検査のことです。
- 耐震検査
- 外壁の劣化の検査
- 屋根の劣化の検査
- シロアリ検査
小規模修繕は、約5〜10年の周期で行うのが一般的です。
原状回復のための修繕
退去後に部屋に生じていた不具合などに対処する修繕です。具体的には以下のような作業を行います。
- 壁紙の張り替え
- 畳やフローリングの張り替え
基本的に、入居者の退去があるたびに行います。
アパートの修繕積立金の目安は?
では、修繕積立金は、どれくらい準備しておけばよいのでしょうか。
アパートの規模・構造別の目安
修繕積立金について考えるには、まず、修繕費がいくらかかるのかを知る必要があります。
国土交通省から、次のような目安が発表されています。
築年数 | 木造(1K) | RC造(1K) |
---|---|---|
5~10年目 | 約7万円 | 約7万円 |
11~15年目 | 約52万円 | 約46万円 |
16~20年目 | 約18万円 | 約18万円 |
21~25年目 | 約80万円 | 約90万円 |
26~30年目 | 約18万円 | 約18万円 |
参考:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
必ずしも、年数が増えると高くなるわけではありません。その理由は、前述したとおり大規模修繕と小規模修繕のサイクルが異なるため、修繕が重なるときに支出が多くなるからです。このことからも、修繕は計画が大切だとわかるでしょう。
月々に積み立てる額は、そうした計画をもとに考える必要があります。
一般的には、目安として、家賃収入の約5%を修繕積立金とするのがよいといわれているようです。しかし、なんとなく決めるのではなく、長期的な修繕計画を立てたうえで考えることをおすすめします。
各修繕工事の費用目安
次に、具体的な工事内容ごとの費用目安を見ていきましょう。
外壁工事
物件のイメージアップのためにも、外壁の修繕は必須です。塗装を塗り直すことで、小さなひび割れを埋められますし、汚れた印象もなくなります。
使用する塗料によって費用は異なりますが、一般に平方メートルあたり約1~3万円が相場です。加えて、足場を組む必要があれば、平方メートルあたり約1,000円の費用がかかります。
屋上・バルコニーなどの防水工事
雨漏りなどを防ぐために必要な修繕です。施工方法により差はありますが、平方メートルあたり約1万円を見ておくとよいとされています。
給排水設備・給水ポンプなどの工事
アパートには各戸に給水するための給水ポンプがあります。約10〜15年で交換が必要とされており、約80〜250万円の費用がかかります。
また、配管も、経年劣化が避けられません。配管の修繕は、1戸あたり約15万円とされていますが、全交換が必要となれば約40万円かかることもあるようです。
給湯器・エアコンの交換
各戸の給湯器やエアコンも、約10年で交換を考えるべきでしょう。1台あたり約10万円と考えておくとよいでしょう。
アパートの修繕積立金に関する注意点
アパートの修繕積立金を計画するときに注意するポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。
修繕積立金は経費として計上できる?
アパート経営では修繕積立金として資金を確保する必要がありますが、決して小さくない支出です。すると気になるのが、この支出を経費計上できるか、という点でしょう。
結論からいうと、修繕積立金を経費に計上はできません。
修繕するための費用はもちろん経費ですが、修繕積立金を積み立てた時点ではまだ修繕はされておらず、将来の修繕のためのお金を準備したにすぎません。自分の持っているお金の一部を、いつか修繕に使うためのお金として印をつけたようなものです。
そのため、会計上は経費ではなく資産の扱いになります。
経理処理としては、実際に修繕が発生したときに、修繕積立金から使った分の金額が修繕費として経費計上されるという流れです。
ただし、マンションの区分所有者が支払う修繕積立金は、アパート経営者の修繕積立金とは性質が異なります。区分所有者が支払った修繕積立金は管理組合でプールされ、将来の修繕以外には使われません。また、返金されないことも一般的です。
そのため、事実上、修繕のための支出になることが間違いないお金ですので、この場合は、支払った時点で経費計上することが認められます。
修繕費が不足している場合
修繕積立金が思うように準備できず、修繕費が不足する場合は、どうすればよいでしょうか。
リフォームローンなどで調達するのもひとつの手ですが、金利負担を考えるとあまりおすすめはできません。
現実的には、修繕のタイミングをずらして、一度に高額な負担が生じないようにする手段があります。しかし、ずらしたことで別の修繕タイミングと重なってしまっては本末転倒です。長期的な視野で、計画を立てることが大切です。
日ごろから管理会社や入居者とコミュニケーションをとっておけば、早期に劣化の兆しをキャッチして早めに手を打てます。結果として、修繕費を抑えられることもあります。
また、次に紹介するような保険の活用や、公的な助成金や補助金が使えないかなども検討する価値があるでしょう。
修繕における火災保険の適用範囲
修繕を行うとき、火災保険が使用できないかどうかは一度確認しておくとよいでしょう。
経年劣化が原因で必要になった修繕などは対象になりませんが、以下のようなものであれば火災保険の補償の範囲になることがあります。
- 突発的に生じたもの
- 原因が外部にあるもの
たとえば、「風の強い日に、風で飛んできた何かによってアパートの外壁が破損した」などのケースであれば、火災保険の風災補償によって、修繕費が補償されるケースがあります。
契約している保険によって範囲や基準は異なるので、保険会社に問い合わせてみるとよいでしょう。
せっかく保険に加入しているのですから、確認だけでもしておきたいものです。保険で補償されるなら、修繕積立金を減らす必要はありません。
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