家賃滞納にあった大家さんが知っておくべき上手な督促・取り立て方法



賃貸借物件オーナーにとって入居者による家賃滞納は深刻な問題です。


もし滞納に直面したら、督促など、どのようにして必要な対処をするのが望ましいのでしょうか。





家賃滞納を防ぐために大家が考えておくこと


まずは、基本的な家賃滞納リスクについて紹介します。


賃貸借物件における家賃滞納


家賃が回収できなければ実質的には空室を抱えているのと同じことです。空室同様に賃貸経営の収支を悪化させる原因であるため、具体的な対策が求められます。


2020年12月に発表された日本賃貸住宅管理協会の調査によると、2か月以上の家賃滞納率は約1%です。調査における「2ヶ月以上」という基準は「支払いの意思はあっても、銀行口座の残高不足で支払いがなされなかった」のようなミスによる滞納を除外しています。


つまり、悪質な家賃滞納の割合が約1%と考えることができるため、賃貸経営をしていく中では、一定のリスク要因であることがわかります。


家賃滞納の時効


家賃滞納に関して、現行民法では5年が時効とされています。時効の起算点は、最後に借主が支払いをした日です。


滞納分は、全額を借主に支払ってもらうことが原則です。しかし家賃の滞納を放置し、督促などを行なわずにいた場合は、未払いの家賃を回収することができないので注意が必要です。


コロナ禍で増える家賃滞納リスク


コロナ禍で収入が不安定になる人が増え、家賃滞納や賃料減額の要求が増えており、不動産経営に悪影響を及ぼしています。こういった経済不安がもととなり家賃の滞納が一気に増加する可能性もあります。


ただ、コロナによる家賃滞納については、公的機関による対策もあります。具体的には、家賃補助(住居確保給付金、特別家賃支援給付金)などです。こうした補助の仕組みを案内するのも、一つの手といえます。





家賃滞納者への督促・取り立ての流れ


結局のところ、借主から確実に滞納家賃を支払ってもらうことが重要です。


しかし自主管理をしていたり、集金業務をどこにも委託していない場合は、物件オーナー自身が滞納家賃を回収しなくてはなりません。どのようなことを行なうべきか、順を追ってみていきます。


入居者への直接連絡


家賃の支払日を過ぎてもまだ家賃が入金されない場合、その旨を入居者に伝える必要があります。ただし、最初から強い態度で接するべきではありません。この時点では悪質性がないことのほうが多いからです。


もし本人に連絡がつかなかったり、また連絡しても入金が確認されないような場合は、書面での連絡をします。


督促状の送付


1回目の督促は、入居者の部屋の郵便ポストなどに投函するのが良いでしょう。書面では、以下のような内容を伝えます。


  • 家賃が支払期日を過ぎてもまだ支払われていないこと

  • 早急な入金とその意思がある旨の連絡をお願いしたいこと

  • 不明な点などがあった場合は、申し出てほしいこと


そして書面での督促後も未納が続いた場合は、2回目の書面を送付します。


2回目では、今度は連帯保証人への連絡を示唆するような内容も文面に入れておきます。


「○月×日までにもしご入金がない場合は連帯保証人へ連絡を入れさせて頂きます」


目安としては、1回目の書面が滞納後1週間後ぐらい、2回目が1ヶ月後ぐらいです。


内容証明郵便の送付


2回目の督促状を送っても家賃の滞納が続く場合は、内容証明郵便による督促に移行します。


内容証明郵便は、配達の際にその内容を郵便局が証明するサービスです。内容証明郵便を受け取った人は、その内容を知らなかったと言い逃れすることはできません。


内容証明郵便の文面は過去2回の文面よりもう少し強めにしても良く、もし支払いがない場合は契約を解除する旨を入れておきます。


連帯保証人への連絡


内容証明郵便を送付した後も滞納が続くようなら、次は連帯保証人へ連絡します。


内容証明郵便の文面にあらかじめ期日を設定しておき、その期限までに支払いがなければ連帯保証人へ電話か郵送で連絡します。連帯保証人が家賃の支払いに応じてくれた場合は、ここで滞納が解決します。


しかし連帯保証人からも支払いがない場合は、次の段階、つまり明渡請求訴訟や強制執行などの法的な措置が必要になってきます。





強制的な取り立てや退去


具体的な取り立てが必要になった場合の選択肢も紹介します。


公示送達


借主が行方不明になってしまったり連絡が取れなくなってしまったりした場合は、公示送達により法的な解決を図ります。


民法第98条には以下のような記載があります。


「意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。」


「公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。」


「公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。」

民法|e-Gov法令検索


もし家賃滞納があった場合、本来であれば借主に文書などを送付して通告することが必要です。しかし何らかの理由でそれができないときは、公示送達の申立を行うことにより、これに代えることができるのです。


公示送達の申立から一定期間が過ぎた後、訴状の送達がなされたと見なされます。


明渡請求訴訟


明渡請求訴訟とは、借主を強制退去させるために借主から起こす訴訟です。


通知、連絡などを行い、その後督促状・内容証明郵便を送付しても効果がなかった場合、賃貸契約解除の効力が発生し、明渡請求訴訟の提起が行われます。


明渡請求訴訟では、建物の明け渡しと滞納家賃の支払いの両方が請求されます。裁判中に和解によって問題が解決することもあります。


判決が出て、なお借主が退去に応じないときは、建物の明け渡しの強制執行(強制退去)が行われます。


強制執行(強制退去)


強制執行とは、家賃の支払いや建物明渡し請求権などを強制的に実現させるものです。強制執行には債務名義(確定判決、仮執行宣言付判決、執行証書)が必要です。


民事執行法第168条には以下のような記載があります。


「不動産等(不動産又は人の居住する船舶等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行う。」

民事執行法|e-Gov法令検索


強制執行のときには、強制執行担当の執行官が借家人を退去させます。借主が仮に不在であっても、解錠して強制的に室内に立ち入ることができ、室内に入ったら執行補助者が明け渡し作業費用の見積もりを行います。


そしてすべての家具や持ちものを運び出し、部屋を空にして、明け渡しの断行期日を記載した催告書、公示書を室内の壁に貼り付け、室内をもとの状態に戻して強制執行は終了します。


なお明渡請求訴訟から強制執行までを行おうとした場合、相当の労力や時間、費用がかかります。その費用は借主からだけでなく、連帯保証人から回収することも可能です。




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