2022.08.12 賃貸管理 費用家賃収入家賃固定資産税

固定資産税から考える家賃の決め方!具体的な計算方法を大家向けに紹介

アパート経営

アパートやマンションなどの賃貸経営では、収益性をしっかり確保するために的確な家賃設定が必要です。そのためには、収支のシミュレーションを厳密にする必要があります。

家賃の決め方として、固定資産税などの経費負担から家賃設定を検討する方法も考えられます。

本記事では、固定資産税と家賃設定の関係などを詳しく解説します。また、オーナー必須の税金や費用の見直し方法とポイントを紹介します。

固定資産税から考える家賃の決め方

固定資産税に焦点を当てた家賃設定について、基本的な考え方を解説します。

家賃設定の考え方

賃貸経営でもっとも重要な家賃を設定するとき、以下3つのポイントは必ず検証するべきポイントです。
  • エリアの家賃相場に合った適正な家賃
  • 物件仕様やグレードとの適合性
  • シミュレーションによる返済比率が50%以下
物件があるエリアの家賃相場よりも高い家賃を設定すると、そもそも関心すら持ってもらえず、入居者が集まりません。 物件仕様やグレードにマッチしていない家賃設定だと、入居者にとっては割高に感じてしまいがちです。内見の結果、候補物件から外される可能性が高いでしょう。 また一般的に、物件を購入するときに組んだ不動産投資ローンなどの借入金返済額の割合が、総収入額の50%を超えると危険といわれています。建物の劣化などで空室が増えたときに、収入から借入金の返済ができず、自己資金から返済する必要が出るおそれがあります。 そのため、返済額が総収入額の50%を下回る水準の家賃を維持する必要があります。

固定資産税のしくみ

市街化区域に不動産を所有していると、固定資産税と都市計画税が課されます。税率は固定資産税が課税標準額の1.4%、都市計画税は0.3%と定められています。課税標準額とは税金を計算する時の基礎になる金額のことです。 税額を算出する基になる課税標準額は、土地と建物で異なります。住宅の敷地として利用されている土地は軽減措置が適用され、課税標準額は固定資産税評価額よりも低くなります。しかし、建物には軽減措置がなく、固定資産税評価額がそのまま課税標準額になります。 また、都市計画税も住宅の敷地に対しては軽減措置がありますが、その他の土地や建物は固定資産税評価額が課税標準額になります。 また、固定資産税評価額は、3年ごとに見直しされます。 土地は公示地価の変化に応じて変動します。建物は再建築価格に経年減点補正率を掛けて評価額を計算するため、築年数が経過するに従い低くなっていきます。 なお、固定資産税と都市計画税は、年間4期に分けて納付するよう定められています。

家賃設定と固定資産税

建物の新築時の価格は、1坪あたり40万〜80万円が一般的な相場です。地方都市より大都市のほうがわずかに高いですが、大きな違いはありません。 対して土地の評価額は、1坪あたり数万円のところから1億円を超える土地もあります。このように、立地条件により土地の固定資産税は大きく変わり、1,000倍の違いがあるケースもあります。 一般的にアパート経営をするには、坪単価が数十万円程度までの土地がよいといわれています。100万円を超える土地の場合は、規模の大きい建物にするのが一般的です。 固定資産税の負担割合は、家賃と固定資産税の関係をシミュレーションするとある程度把握できます。 例として、坪単価100万円の土地でアパートを経営した場合の、固定資産税の負担割合を求めます。
土地面積 100坪
土地単価 100万円
土地価格 1億円
土地固定資産税評価額 7,000万円
土地固定資産税課税標準額 1,167万円
土地固定資産税 16万円
建物 200坪
建物固定資産税評価額 2,000万円
建物固定資産税 28万円
固定資産税合計 44万円
戸数 20戸
年間家賃 2,400万円
固定資産税比率 1.83%
年間家賃収入の2%前後が、固定資産税負担額になっていることがわかります。 一般にアパート経営における必要経費は15%ぐらいといわれています。その1割ほどが固定資産税負担となり、修繕費などと比べると、あまり大きな負担ではありません。 家賃を設定するときは、地域の家賃相場や需要動向などを重視し、固定資産税負担額をあまり意識する必要はないといえます。
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アパートやマンションにかかる固定資産税

固定資産税は、不動産を所有している期間は毎年継続して課税される税金です。所有期間の納税額を合計すると、大きな金額になることもあります。 ここでは、具体的な事例における固定資産税を計算してみます。

固定資産税の計算方法

固定資産税は、固定資産税評価額が基になっている課税標準額に、税率を掛けて計算します。 税率は固定資産税が1.4%、都市計画税は0.3%と定められているため、それぞれ以下のように計算できます。 固定資産税=課税標準額 × 1.4% 都市計画税=課税標準額 × 0.3% ただし、課税標準額が固定資産税評価額と同じになるケースとならないケースがあるため、注意が必要です。また税率は、地方公共団体によって異なることもあるため、事前に確認しましょう。 具体的には、住宅やアパートが建っている土地は、住宅用地の特例措置が受けられます。これは、固定資産税の課税標準額が固定資産税評価額よりも軽減される措置です。 住宅用地には2種類あり、それぞれ以下のように大幅に低減されます。
区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 住宅用地で住宅1戸につき200m2までの部分 評価額の6分の1 評価額の3分の1
一般住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地 評価額の3分の1 評価額の3分の2
具体的な例を挙げて、土地の固定資産税をシミュレーションしてみましょう。 土地の面積が300m2(約90坪)として、一戸建て住宅と6戸のアパートがそれぞれ建っている土地の固定資産税と都市計画税を計算してみましょう。
一戸建て住宅がある土地 アパートがある土地
固定資産税 都市計画税 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地の部分 200m2 同左 300m2 同左
一般住宅用地の部分 100m2 0
固定資産税評価額 3,000万円 3,000万円
小規模住宅用地の標準額 333万円 667万円 500万円 1,000万円
一般住宅用地の部分の標準額 333万円 667万円 0円 0円
固定資産税課税標準額 667万円 1,333万円 500万円 1,000万円
税額 9万3,300円 4万円 7万円 3万円
合計税額 13万3,300円 10万円
アパートは1棟に6戸の住宅があるため、土地は小規模住宅用地の適用を受けられます。

1階に店舗があるアパートの軽減措置

2階建てのアパートで1階に店舗のある事例を考えてみましょう。 1階床面積が300m2の2階建てで、2階がアパートと仮定します。アパートはファミリータイプで、1戸あたり70m2で合計4戸の住戸があるとします。 小規模用住宅用地は住宅1戸につき200m2までの部分と決まっているため、4戸の場合は800m2までの部分です。 つまり、敷地面積が1,000m2だと、800m2を除いた200m2には、小規模用住宅用地の軽減措置が適用されません。 この場合、アパート以外あるいは更地の場合とどれくらい固定資産税と都市計画税が違うのでしょうか。
区分 店舗付きのアパートがある土地 (800m2のみ軽減措置あり) 都市計画税
土地面積 1,000m2 1,000m2
固定資産税評価額 8,000万円 8,000万円
小規模住宅用地の標準額 1,067万円
住宅用地以外の標準額 1,600万円 8,000万円
固定資産税課税標準額合計 2,667万円 8,000万円
固定資産税 37万3,300円 112万0,000円
都市計画税 8万円 24万円
合計税額 45万3,300円 136万円
アパートなど賃貸住宅用の建物が建っていない場合、固定資産税と都市計画税は合計で136万円かかります。 一方、店舗付きのアパートが建っている土地のように、すべてが小規模住宅用地の軽減措置が適用できない場合であっても、税額は3分の1ほどに軽減されることがわかります。 ちなみに敷地面積が1,000m2の土地では、アパートが5戸以上の住戸があれば、土地すべてに軽減措置が適用されます。その場合、固定資産税と都市計画税の合計額は22万6,600円です。

不動産の維持費用

土地や建物を所有している限り、固定資産税を納める義務があります。 さらに、建物は定期的なメンテナンス費用がかかります。更地でも、雑草処理や投棄物の処理などが必要です。 このように、不動産は放っておくことができず、何らかの維持費用の負担は免れません。 そのため、不動産は上手に活用を図り、最低限の費用を捻出できるように意識しましょう。 冒頭では「家賃設定を考えるために固定資産税の負担を意識する必要はない」と述べました。しかし、効率のよい運用ではなく最低限の運用を考えるなら、固定資産税額を意識して賃料の設定をすることは、実は大切なことなのです。
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固定資産税や費用は定期的な見直しが必要

賃貸経営では、固定資産税を含めた必要経費について定期的に見直し、家賃設定が適正かを確認しましょう。

家賃を決めるときに見直すべき費用

一般的に賃貸経営では、以下のような必要経費があります。
経費項目 内容
固定資産税 不動産に対して課税される固定資産税と都市計画税
損害保険料 賃貸用建物の損害保険や施設賠償保険の保険料
租税公課 事業税や印紙税などの事業に関わる税金と不動産取得税
修繕費 建物・設備の維持管理や修繕にかかる費用
水道光熱費 共用電気料や共用水道料
管理費 入居者募集や契約管理、建物管理に関する費用
借入金利息 不動産取得の際に借入れた資金の返済金の利息分
減価償却費 経年により減少する建物と設備の価値を償却する費用
交通費 物件管理のため、行政機関や金融機関に行くための交通費
通信費 管理会社との連絡や入居者への文書発送などの費用
新聞図書費 賃貸経営に関する情報・知識を得るための書籍や新聞購読費など
消耗品費 パソコンやデジタルカメラ、事務に使用する消耗品
交際接待費 管理会社や顧問税理士など賃貸経営で必要な相手との交際接待費用
雑費 その他の費用
固定金利の場合の借入金利息や減価償却費は、長期間にわたって変動することはあまりありません。 しかし、物価や社会経済環境の変化により、価格が変動する費用があります。 たとえば、最近増えている自然災害の影響を受けて、損害保険料が上昇しています。建築資材の高騰や職人不足による労務費の上昇など、修繕に関するコストも上がっています。 家賃はエリア内の相場を勘案しつつ、こうした管理費用のコストアップ要因にも注目して、適正な設定を心がけましょう。

固定資産税は3年ごとに見直される

固定資産税は3年ごとに見直されます。このタイミングで、現在の家賃が適正であるかを検証することをおすすめします。 前述したように賃貸経営で支出される費用には、あまり変動しない費用と変動する費用があります。
  • 借入金利息(変動金利の場合)
  • 保険料の改定
  • 物価の変動
  • 税制の変化
このような要因により賃貸経営の経費は変動しており、家賃設定が適正かどうかをときどきチェックすることが大切です。 そのタイミングとして、3年ごとに行われる固定資産税の見直し時期に合わせて行うことがおすすめです。 必要経費の見直しにより、家賃設定が現状の周辺相場とどれくらい違うのかもチェックできます。周辺相場と大きく差がある場合は、家賃の改訂を検討する必要があります。

専門家の意見を聞こう

オーナーにとって、家賃設定は賃貸経営で一番重要といえます。賃貸経営をこれから始める方だけでなく、現在すでにオーナーの方も改めて家賃設定を検討しましょう。 社会と経済環境の変化なども、必要経費に影響を与える要素です。常に社会の変化に敏感でいなければ、オーナーは務まらないでしょう。 不動産投資セミナーや経営者セミナーなどは、オーナーが知っておくべき情報を収集できる絶好の機会です。 ビズアナオーナーは、定期的にオーナー向けのセミナーや相談会を開催しています。賃貸経営に関する最新情報や基本知識、固定資産税の見直しに関するセミナーなどがあります。積極的に参加して、オーナーとしての知識や技術をレベルアップさせましょう。
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